キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのレビュー・評価・感想

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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
10

2023年最高の傑作であり怪作のレビュー

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、マーティン・スコセッシ監督作品であり、スコセッシ作品常連のレオナルド・ディカプリオ主演の映画です。
1920年代のアメリカ、オクラホマ州が舞台。石油の利権で巨万の富を得たインディアンの一族、オセージ族は、高級な服やアクセサリーに身を包み、差別や格差が当然のように横行していた当時にもかかわらず、白人の運転手がおり、白人の使用人がいるという生活を送っていました。しかし、「白人を奴隷として扱っている」と過剰な報道をされたり、白人の許可が降りなければ好きにお金を使えないなどといった、現在では考えられない状況に置かれていました。
オセージ族の間では、後から生えてきた草が、先に咲いていた花の養分を吸い取り、枯らしてしまうことを「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」と呼んでいました。まさに、先住民であるオセージ族の富を後からやってきた白人があらゆる方法で搾取する様と合致します。この映画では、白人を徹底的に悪として描いており、平凡でこれといった取り柄のない主人公は、叔父の言われるがままに利権を手にいれるため、犯罪に手を染めていきます。映画の前半では、オセージ族の女性との恋や、開拓時代の活気が描かれており、明るい雰囲気だったのが、次第に暗く、不穏で不気味な雰囲気に変化していきました。
強烈な社会風刺的作品であり、徹底的に予想を裏切る展開は、約3時間半という長尺にもかかわらず、退屈させない作品でした。アカデミー賞最有力というのも納得です。