昨日のおれは今日の敵

昨日のおれは今日の敵のレビュー・評価・感想

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昨日のおれは今日の敵
7

作業と仮眠のあるあるを切り取ったような作品

1980年代に制作された藤子・F・不二雄氏による作品。
主人公の漫画家の男は、翌日に原稿の締め切りを控えているというのに、アシスタントと喧嘩して真っ白なままの原稿を一人で書かなければいけない。しかし、なにかと集中できないから一時間だけ仮眠を取ろうと布団に入って目が覚めたら朝だった。担当編集者が来てしまって、なんやかんやと言い訳をして原稿を待ってもらうことができたけれども、主人公は後悔と自責の念で部屋の中を走り回った。すると、彼は十二時間前、つまり昨晩の深夜にタイムスリップした。
寝ている過去の自分を起こして、ネームが完成した。過去から来た主人公は、反対向きに走り回ってもといた時間へと帰り、さて、原稿を完成させるぞと机に向かった。しかし、十二時間寝ていた過去を変えたから瞼が重い。なので再び少しだけ寝ようとすると、ネームを書いた過去の自分がやってきて、過去の自分に監視されながらペン入れの作業に取り掛かった。そして最後に二人は未来へ行って、眠りについてまた原稿をさぼっている未来の自分を起こして、三人で殴って起こしあいながら手分けして漫画を完成させるのであった。

さて、私はこの漫画に対して、ひょんなことから主人公が身に着けたタイムスリップの能力、その理由や原理ではなく、それ以外の主人公の言動のほうが印象的だった。やるべきことがあるのに、眠気に勝てずに少しだけ布団へ入ったら、ものすごく寝てしまって結局何にもできずに時間だけが経っていた。やることがある時に限って眠気が襲い掛かるうえに、決めていた仮眠の時間よりもロングスリーパーになる自分に嫌気がさすことが幾度あったことか、わが身に物凄く覚えがある。
痛みと監視されるプレッシャーが付いてくるけれども、やるべきことを成し遂げられるための手段としてタイムスリップ能力を手に入れた主人公が、少し羨ましくも感じられた。