ススムちゃん大ショック

ススムちゃん大ショックのレビュー・評価・感想

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ススムちゃん大ショック
7

非現実的とは断言できない未来の図

漫画紹介動画で知った永井豪の短編漫画で、ヴィレッジヴァンガードで偶然この漫画が収録されているホラー漫画短編集を発見し、速攻購入した。主人公のススムちゃんがいつものように通学途中に公園へ行くと、二人の母親が自分の子供をあっという間に惨殺して、何事もなかったかのように世間話をしながら去っていく現場を目撃してしまう。交番では警官が子供に発砲し、学校では先生が笑いながら生徒を手にかけていた。生き残ったススムちゃんと友人二人は下水道に隠れて、何がどうなっているのか考えた。大人と子供を繋いでいた一本の線が切れたから。大切にする理由がなくなったから、害虫を殺しても心が痛まないのと同列になってしまったからだと結論を出した。
それでもススムちゃんは、大好きなママだけは違う、自分への愛情は消えていないと信じて家へと帰っていった。しかし、ススムちゃんのママへの愛は、あっさりきっぱりと裏切られるのであった。
この線の詳細は作中では明確でなかったが、子孫を残す本能、または親から子への無償の愛情なのかもしれない。しかし現実でも親が子をだけでなく、家族同士での殺人がどこかで起きている。実際に線が切れた人は実在するのだ。なのでこの漫画は、こんな殺戮なんて起こりっこないと断言できない現実味を持った恐怖を心に残す一作である。
また、この漫画の構成は登場人物一人の顔のアップのみ、頭から腰までだけなどのシンプルな構図の大きなコマが多く、状況や人物の心境の説明やセリフが簡潔にまとまっていたので、作中でススムちゃんたち子供が感じていた、日常がいきなり壊れた恐怖と困惑と絶望がまっすぐに伝わってきた。