ウィリーズ・ワンダーランド

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ウィリーズ・ワンダーランド
8

ニコラス・ケイジはクリーチャーより怖い?!お約束破りのホラーコメディ

『ウィリーズ・ワンダーランド』(原題:Willy's Wonderland)は、2021年に公開されたアメリカ合衆国のアクションコメディホラー映画だ。監督はケヴィン・ルイス。

ストーリーはある男(ニコラス・ケイジ)が運転していた自動車がパンクするところから始まる。近くの自動車工場を営むジェド(クリス・ワーナー)に修理を頼むも、現金で1000ドルという法外な値段を吹っ掛けられる。カードも使えなければATMもなくどうしようもない。すると近々廃園から再オープンする予定のテーマパーク、“ウィリーズ・ワンダーランド”のオーナーのテックス(リック・ライツ)が、「園内を一晩清掃してくれれば代金を肩代わりする」と助け舟を出し、男はそれを了承した。

こうしてやってきたウィリーズ・ワンダーランドだが、実はこのテーマパークはいわくつきであった。連続殺人犯のジェリー・ロバート・ウィリス(グラント・クレイマー)がその仲間たちとともに殺人を行うための隠れみのとしており、犯行が露呈した時点で彼とその仲間たちは全員自殺したのである。その10年後に新たなオーナーになったテックスが再オープンすることになったのだ。

ところがジェリー・ウィリスとその仲間たちの自殺は追い詰められての事ではなく、悪魔の儀式の締めくくりとして行っており、彼らの魂は当時園内で稼働していたアニマトロニクスのウィリー達に宿っていたのだ。営業が再開した後アニマトロニクスは来園者を殺し始める。これを問題として施設を解体しようとした業者を、一家まとめて惨殺する大惨事が起こった。

解体は取りやめられて施設は閉鎖されるも、悪霊がとりついたアニマトロニクスは度々施設を抜け出して町の住人を襲うようになる。町の住人たちは被害を抑えるために、近くを通りかがったよそ者を生け贄としてテーマパークに閉じ込めて、難を逃れるようになった。ここまで言うと分かってしまうが、自動車のパンク自体が町ぐるみのグルで、男は生け贄として殺人アニマトロニクスがさまよっているテーマパークに閉じ込められてしまうのだった。

普通のホラー映画なら「そんな哀れな男の恐怖体験」となるが、その男を演じるのは『コン・エアー』などのアクション映画でおなじみのニコラス・ケイジ。とても襲われるイメージが浮かばないが、劇中では実際にダチョウのアニマトロニクスのオジー・ザ・オーストリッチに襲われた際に、折れたモップで滅多打ちにして返り討ちにしてしまっている。

そう、この映画はクリーチャーに襲われるのではなく、クリーチャーが襲われる映画なのだ。更に件の男は劇中意味のあるセリフを全くしゃべらず、「殺すことが目的」という意思が分かっているアニマトロニクスよりも、かえって不気味で理不尽に見える演出がされている。
無論ホラーもののお約束であるクリーチャーに襲われる若者グループや、因果応報で死んでいく悪役などもしっかり登場しているが、最大の見どころはクリーチャーをさまざまな方法で惨殺していくニコラス・ケイジだろう。「人間相手ならば写せない描写でも、機械相手ならここまでできる」と言わんばかりの徹底的な破壊は、カタルシスあふれるものがある。「ホラー映画は好きだけど、ちょっと変わった映画が見たい」という方にはぜひオススメしたい作品だ。