ある男

ある男のレビュー・評価・感想

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ある男
8

自分のルーツと向き合い続けるつらさ

弁護士の城戸(妻夫木聡)は、昔の依頼主である里枝(安藤サクラ)から、「ある男」についての調査を依頼される。
その「男」大祐(窪田正孝)は、里枝と2人の子供たちと穏やかに暮らしていたが、ある日不慮の事故で亡くなってしまう。大祐の法要に訪れた、長年疎遠にしていた兄の恭一(眞島秀和)が遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と言ったことから、大祐が全くの別人であることがわかった。

依頼を受けた城戸は、彼がいったい誰なのか、なぜ他人の人生を歩んでいたのかを調べはじめる。そして過去に彼の父親が起こした事件により、彼が背負ってきた傷を知ることになる。
彼の真の姿に近づくにつれ在日3世である城戸自身が、日常の中でことあるごとにつきつけられる自分のルーツへの偏見に対する思いと、大祐と称した男が戸籍を変えてまで別人の人生を歩みたいと思った心情とがリンクしていく。

妻夫木聡さんが時間を追うごとに、暗く重くなる心情をうまく表現している。また窪田正孝さんの過去の表情と、家族を持ってからの穏やかな表情との違いがとてもよく表現されていて素晴らしい。
そのほか演技に定評のある俳優陣がそれぞれの人物を繊細に表現しており、主人公だけでなく、どの人物の心情にも共感できる作品。