ぼのぼの(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ぼのぼの』(映画)とは、いがらしみきおの同名漫画を原作とする1993年公開の映画作品。いがらしみきお自身が監督・脚本・絵コンテ・声優を務めるという非常に珍しい制作手法を取ったことで知られている。キャッチフレーズは「いろいろカワイイ、いろいろヘンだ!」、「楽しいのって、どうして終わってしまうんだろう。」。
ラッコのぼのぼのが暮らす森に、“大きな生き物”がやってくる。子供の動物たちが好奇心からそれを見に行こうとする一方、大人たちは「あれが来ると森の何かが変わる」と警戒し、それぞれに動き出す。

『ぼのぼの』(アニメ映画)の概要

『ぼのぼの』(アニメ映画)とは、いがらしみきおの同名漫画を原作とする1993年公開の映画作品。キャッチフレーズは「いろいろカワイイ、いろいろヘンだ!」、「楽しいのって、どうして終わってしまうんだろう。」。
テレビアニメに先駆けて制作された、『ぼのぼの』の初の映像化作品である。作者のいがらしみきお自身が監督・脚本・絵コンテ・声優を務めるという非常に珍しい制作手法を取ったことで知られており、アニメーション監督は後に『クレヨンしんちゃん』シリーズに携わる武藤裕治が務めた。
2023年、アニメ版の『ぼのぼの』30周年記念としてYouTubeで無料公開され、往年のファンからも新規のファンからも改めて注目されることとなった。

原作は擬人化された動物たちによるほのぼのとした日常と、その中で不意に飛び出す哲学的な問い掛けが生み出す独特な味わいで、「子供から大人まで楽しめる漫画」として話題となる。本作には登場しないものの、「しまっちゃうおじさん」などのユニークなキャラクターはネットミームとして長く残り、原作の人気と高い評価を裏付けるものともなった。
表向きのテーマはキャッチフレーズにもなっている「楽しいことはどうして終わってしまうのか」という子供にも分かりやすいものだが、「“命より大切なもの”は存在するのか、それは本当に誰かの命よりも重いものなのか」という重厚なサブテーマを持っており、スナドリネコさんとヒグマの大将の対立の形でそれを描いている。

ラッコのぼのぼのが暮らす森に、“大きな生き物”がやってくる。この生き物は数年に1度森にやってくるらしく、その都度「森の中の何かが変わる」とされていた。
「そんな生き物がいるなら見てやろう」というアライグマくんに引っ張られるようにしてぼのぼのがその生き物を探しに行く中、スナドリネコさんやヒグマの大将といった大人の動物たちは“大きな生き物がもたらす変化”を警戒。それぞれの思惑で動き出していく。

『ぼのぼの』(アニメ映画)のあらすじ・ストーリー

平和な森の闖入者

ラッコのぼのぼのは、海に面した大きな森の中で生まれ育った。友人のシマリスくんやアライグマくんと毎日遊んで過ごし、「森で一番強い獣が住む」とされる巣穴で暮らすスナドリネコさんを尊敬し、穏やかな日々を送っていた。
ある時、ぼのぼのはふと「楽しいことはどうしていつか終わってしまうのか」との疑問を抱く。彼がこれについてスナドリネコさんに相談しようと考えた頃、森に“大きな生き物”がやってくる。それは森の中にはいない、子供たちにとっては見たこともない生き物で、ぼのぼのはシマリスくんと一緒に「そんな大きな生き物が本当にいるのだろうか」と首を傾げる。

一方、大人の動物たちは「大きな生き物が来ると森の中の何かが変わる」というジンクスの方を警戒しており、これに備えてそれぞれが様々に動き出す。一番最初に大きな生き物の接近に気付いたクズリくんのおとうさんは、これを自身の兄貴分でもあるヒグマの大将に報告。ヒグマの大将は「時は来た」とばかりにスナドリネコの下を訪れ、彼に決闘を申し込む。
アライグマくんはそんな騒ぎをおもしろそうに眺めていたが、隣にいるぼのぼのが状況についていけずにぼんやりしているのを見て「自分だけ盛り上がっているのがバカみたいだ」と怒り出す。そんなアライグマくんに引っ張られるようにして、ぼのぼのとシマリスくんは森に少しずつ近づいてくる大きな生き物を探しに出掛けることとなった。

数年前の出来事

大きな生き物の正体は、森にはいないジャコウウシだった。前回ジャコウウシが来た時も、森の中では大きな変化があった。どこで何があったのか、大怪我したスナドリネコさんが森の近くの海に流れ着き、ぼのぼののおとうさんに助けられて森の中で暮らすようになったのである。
この頃ヒグマの大将は奥さんとの間に子供が生まれたばかりだったが、スナドリネコさんの存在を知って彼の下を訪れる。ヒグマの大将は、スナドリネコさんが「命よりも大切な何か」のために戦った末に森へとやってきたことを察しており、その強い決意が森の動物たちを変えてしまうことを恐れていた。「命より大切なことなどこの世には無いし、あってはならない」というのがヒグマの大将の持論だった。

スナドリネコさんは「どうしてこの森に来たのか、前にいたところで何があったのか」を黙して語らず、森を去れという指示にも従わず、ヒグマの大将は「ならば腕づくで従わせてやる」とばかり決闘を申し込む。この戦いでヒグマの大将は顔に傷を負い、スナドリネコさんも手傷を負って倒れ、勝負自体は痛み分けとなる。
しかしヒグマの大将は「本気で戦っても相手の意志を変えられなかった」という点で己の負けとスナドリネコさんの力を認め、森で一番強い動物が暮らす巣穴を彼に譲り、自身は森の中から姿を消す。あたかもそれは、スナドリネコさんが「“命より大切な何か”など本当は存在しない」ことを知るための処置のようでもあり、ヒグマの大将が「スナドリネコさんが殉じようとしていた“命より大切な何か”の存在」を学ぶための処置のようでもあった。

森に起きた変化

ぼのぼのたちがジャコウウシを探して森を駆け回る中、シマリスくんの姉であるショーねえちゃんが彼らを追跡。「家族から頼まれた」とシマリスくんを連れていこうとして、「一緒に大きな生き物を探しているのに邪魔するな」とこれを阻止しようとしたアライグマくんと揉め事を起こす。一方、ジャコウウシがいよいよ近づいているのに気付いたクズリくんやフェネックギツネくん、ヒグマの大将の奥さんやその子供のコヒグマくんといった森の動物たちもまた、これを一目見ようと集まってくる。
ジャコウウシが近くにいることに気付いたぼのぼのたちは、慌ててケンカをやめて茂みの中に身を潜める。目の前に現れたジャコウウシの威容を一行が固唾を飲んで見守る中、コヒグマくんがジャコウウシの前に飛び出してしまう。「このままでは踏まれてしまう」とぼのぼのたちが慌てる中、真っ先にコヒグマくんを庇ったのはヒグマの大将だった。

今回もまたスナドリネコさんとの戦いに決着をつけられなかったヒグマの大将だが、自分が懸命に守ってきた「森の秩序と平和」が命より大切なものなのかどうかを試すがごとく、1度我が子を庇っておきながらジャコウウシの進路から退く。これによりコヒグマくんはジャコウウシの足元に消えていき、誰もが息を飲むものの、純粋に幸運によって傷1つなく生還。ヒグマの大将は「運の強い子だ」と喜び、しかし結局“命より大切なものは本当にあるのか”という問いに答えを出せず、今回もスナドリネコさんに勝てなかったとして巣穴を彼に預けたまま去っていく。
ジャコウウシという圧倒的に巨大な生き物の到来は森の動物たちに強い刺激を与え、「ダンスのポーズが決まらない」といったそれぞれが抱える悩みを忘れさせてしまう。強いていうなら、それがジャコウウシが今回森の動物たちにもたらした変化だった。

ヒグマの大将との決闘で傷だらけのスナドリネコさんと共に帰路に就く中、ぼのぼのは以前から彼に聞こうと考えていた「どうして楽しいことはいつか終わってしまうのか」という疑問を思い出す。改めてこれについて尋ねてきたぼのぼのに、スナドリネコさんは「苦しいこともいつか終わってしまうから」との答えを返す。「また遊びにおいで」と優しい言葉をかけるスナドリネコさんに見送られつつ、ぼのぼのは父の待つ海岸へと向かうのだった。

『ぼのぼの』(アニメ映画)の登場人物・キャラクター

主要人物

ぼのぼの

CV:藤田淑子

ラッコの少年。アライグマくんに多少乱暴なことをされても「やめてよ」と嘆くだけでまったく反撃しないなど、非常にのんびりとした性格。
思考も物言いもスローモーだが、内心では様々なことを考えており、本作では「楽しいことはどうしていつか終わってしまうのか」との疑問に囚われる。

シマリスくん

CV:馬場澄江

ぼのぼのの友達。言動はやや女性的だが、これは2人の姉の影響で、れっきとした男の子である。
せっかちで忙しない性格だが、ぼのぼのとは気が合うらしく、よく2人で様々な哲学的疑問にぶつかっては首を傾げている。体格差もあって、アライグマくんにはたびたび蹴り飛ばされている。

アライグマくん

CV:屋良有作

ぼのぼのの友人。口調が荒く、ケンカっ早く、自分の思い通りにならないとすぐに怒り出す自己中心的な性格。
“大きな生き物”の来訪に森の中が慌ただしくなる様をおもしろがっていたが、「そんな大きな生き物が本当にいるのだろうか」と妙に冷めた対応を取るぼのぼのとシマリスくんを見て「自分だけバカみたいだ」と怒り出し、直接見に行こうと2人に提案する。

森の動物たち

スナドリネコさん

CV:大塚芳忠

「森で一番強い獣が住む」とされる巣穴で暮らしている動物。飄々とした性格で、相手の質問を無視することもあれば、哲学的な含蓄ある言葉を返したりもする。ぼのぼのから尊敬されている。
海岸で傷だらけのまま倒れているところをぼのぼのに発見され、彼の父によって森の安全な場所へと運ばれる。ヒグマの大将は「命より大切な何かのために戦った」と指摘されているが、本人はこれを否定も肯定もしていない。

今回のヒグマの大将との戦いの詳細は描かれていないが、前回に関しては「顔を含めて傷だらけながら立っているヒグマの大将」と「ヒグマの大将が手心を加えたお陰で致命傷を免れるも、傷だらけで倒れているスナドリネコさん」というシーンで決着となっており、勝負自体はほとんど痛み分けかスナドリネコさんの方がやや劣勢だったようである。

ぼのぼののおとうさん

CV:いがらしみきお

ぼのぼのの父。無口でのんびりとした性格で、後者についてはぼのぼのにも受け継がれている。
意外と力持ちで、前回ジャコウウシが森にやってきた時には海岸で倒れていたスナドリネコさんを森まで担いで運んでいる。

声優のいがらしみきおは、本作の原作者である。

シマリスくんのおとうさん

CV:関口和之

シマリスくんの父親。寡黙で真面目な性格。
家族のために大量のクルミを運んでいたが、1人でたくさん持ち過ぎたために腰を壊してしまう。

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@YAMAKUZIRA

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