劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)のネタバレ解説・考察まとめ

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』とは、2023年に公開された、北条司の漫画『シティーハンター』を原作とする劇場用アニメ作品。監督は同作のアニメ版を多く手掛けたこだま兼嗣が務め、主要人物の声優もほとんどが続投。公式サイトには「THE FINAL CHAPTER BEGINS」と銘打たれ、再解釈された原作終盤のエピソードが描かれている。
新宿で活動する掃除人冴羽獠に、アンジーという女性が猫探しを依頼。実は彼女は恐るべき新兵器の開発を止めるため、獠の殺害を目論んでいた。

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』の概要

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』とは、2023年9月8日に公開された、北条司の漫画『シティーハンター』を原作とする劇場用アニメ作品。
公式サイトには「THE FINAL CHAPTER BEGINS」と銘打たれており、原作終盤のエピソードをアレンジした内容かつ続編を強く意識した構成になっている。公開日に関東一帯に台風が上陸するアクシデントに見舞われながらも初週興行収入は3億円を超え、『シティーハンター』の根強い人気を証明した。

監督は同作のアニメ版を多く手掛けたこだま兼嗣が務め、主要人物の声優もほとんどが続投。ゲストキャラクターの声優には沢城みゆき、関智一、木村昴など若手の実力派が採用される一方、原作においても最大の敵として君臨した海原神(かいばら しん)役はベテラン声優の堀内賢雄が演じることとなり、その豪華な布陣は公開前から話題となっていた。
北条司の描いた別作品の主人公である怪盗姉妹のキャッツアイは前作『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』から引き続き物語に深く関わる他、本作ではそのキャッツアイと共演した『ルパンIII世』も登場。主人公たちと顔見知りであるかのような言動を残し、今後のコラボレーションに期待が寄せられた。

新宿で活動する、裏社会最強の呼び声高い「掃除人」冴羽獠(さえば りょう)。ある日、相棒の槇村香(まきむら かおる)が、アンジーという女性の依頼人を連れてくる。彼女は動画配信をしながら世界中を旅しているらしく、新宿で逃げ出してしまった自分の猫を探してほしいというのだった。
高額の依頼料を提示されて香がこれに飛びつき、アンジーの美しさにメロメロの獠を引っ張って早速猫探しを開始。しかし実はアンジーは恐るべき新兵器「天使の涙」(エンジェルダスト)の開発を止めるため、獠の殺害を目論んでいた。彼女を追って海外の裏社会の人間までもが新宿に現れ、天使の涙を巡る激しい攻防が繰り広げられる。

renote.net

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』のあらすじ・ストーリー

怪盗チームの助っ人

冴羽獠(さえば りょう)は、裏社会最強の呼び声高い「掃除人」(スイーパー)。幼少期に記憶喪失のまま海外の反政府ゲリラに保護され、当時この部隊を率いていた海原神(かいばら しん)という男に兵士としてのあらゆる知識と技術を叩き込まれた後に新宿へと流れつき、悪党に脅かされる人々から護衛などの様々な依頼を請け負って暮らしていた。
新興麻薬組織「赤いペガサス」との抗争の中で相棒の槇村秀幸(まきむら ひでゆき)を失うも、「兄の跡を継ぎたい」と申し出た彼の妹の槇村香(まきむら かおる)を2代目の相棒として再出発。ゲリラ時代からの知り合いで戦友兼商売敵である海坊主(うみぼうず)と時に協力し、時に競いながら、獠は新宿の街を裏社会の人間という立場で悪党から守り続けていた。

そんなある日、海坊主が表向き経営している喫茶店の大家でもある来生3姉妹から「仕事を手伝ってほしい」との依頼が来る。彼女たちは「キャッツアイ」という怪盗チームとしても活動しており、今回の標的は武装した警備員に守られているという情報があったため、純粋な戦闘力に長けた獠と海坊主に協力を要請したのだった。
獠は海坊主と共にこれを引き受け、陽動として警備員たちを誘い出し、手際よく無力化していく。来生3姉妹も無事に目的の品を盗み出すが、ここに割って入った謎の人物の妨害を受ける。獠と海坊主がフォローに入るも、相手の実力はこの2人をして油断できないほどのものがあった。結局逃走ルートまできっちり用意していた謎の人物によって、来生3姉妹が狙っていた品は持ち去られてしまう。

不思議な依頼人

来生3姉妹の助っ人に出向いた数日後、香が「新しい依頼人」と言ってアンジーことアンジェリーナ=ドロティーア・オーシアノスという女性を彼らの家に連れてくる。アンジーは動画配信をしながら世界を旅しているらしく、新宿に着いたところで逃げ出してしまった飼い猫のキャリコを探してほしいというのだった。彼女が提示した高額の依頼料に大喜びした香に引きずられるまま、獠は新宿の街を猫を探して歩き回る。
アンジーは来日するのはこれが初めてらしく、日本の様々な文化や新宿の人々の優しさに触れては大いに驚く。一方、彼女は「裏社会最強の掃除人」として名を馳せる獠を個人的に知っているような素振りを見せ、自分に親切にしてくれる香に「もし自分が獠を殺しに来たとしたらどうする」と不穏なことを尋ねるのだった。

やがてキャリコの写真が街頭広告の猫を撮影したものであること、何者かがアンジーを襲撃したことで事態は一変。どういうことかと尋ねれば、アンジーは「以前から正体不明の男たちに狙われている。どう言えば信じてもらえるか分からず、猫探しを口実にした」と弁解する。かくして猫探しの依頼はアンジーの個人的な護衛へと早変わりし、獠たちは対策を練っていく。
しかし、実はアンジーが「獠を殺しに来た」というのは本当で、その背後には獠の育ての親である海原が進める「天使の涙」(エンジェルダスト)という恐るべき新兵器の存在があった。アンジーは海原によって育てられた、獠の妹弟子にあたる凄腕の兵士であり、「自分が獠を倒すことで、海原に天使の涙を量産計画ごと破棄させる」ために日本にやってきたのだった。

天使の涙争奪戦

天使の涙とは、筋力や感覚器を含む人間のあらゆる身体機能を劇的に強化するナノマシンだった。最初期に作られたものは、使用した者を廃人に追い込む危険なもので、その後いったん研究は凍結。しかし海原率いる犯罪組織「ユニオン・テオーペ」が性能を落とした第2世代型の量産体制を整え、これをさらに強化した第1世代型と同等の性能を持つ最新型「ADM」(アダム)の試作型までもが完成していた。
戦場で海原に拾われ、彼を2人目の父として慕いながら兵士として戦い続けてきたアンジーは、「人間を人間以上の存在にしてしまうADMは危険過ぎる、海原に手を引かせたい」と考え、唯一完成したADMのアンプルを狙って来日。警察とユニオン・テオーペが本格的な抗争に入る前に密かにこれを処分しようとした来生3姉妹を妨害し、獠や海坊主を出し抜いてこれを奪取した。獠は来生3姉妹との共同作戦の際に乱入してきた謎の人物がアンジーであることにとっくに気付いており、依頼に応じるふりをしながら彼女の真意を見極めようとしていたのだった。

アンジーは「ADMなどなくても自分たちは海原の求める役目を完全に遂行できる。それを証明するために、海原が“自分の最高傑作”と評する冴羽獠をこの手で倒す」とも決意しており、獠と戦う機会を虎視眈々と狙っていた。しかし自分に親切にしてくれる香の手前なかなかそれを言い出せず、これを見た獠は「アンジーは本質的に悪人ではない」と判断して海原と縁を切るよう勧める。
そのアンジーを襲った男たちの正体は、海原の下で彼女とチームを組んでいたピラルクーとエスパーダという2人の兵士だった。彼らは「自分たちを裏切ったアンジーの抹殺」と「アンジーが奪っていったADMの回収」のために来日しており、日本の平和さに戸惑い、ちょっとした食事の美味しさを堪能しつつも任務を遂行せんとしていた。ピラルクーたちとの対決は避けられないと判断したアンジーは、自分を救おうとしてくれた獠に感謝の言葉と共にADMを渡し、1人ユニオン・テオーペの先兵が待つ埠頭へと赴く。

海原の魔手

アンジーが死をも覚悟していることを察した獠と香は、海坊主にも加勢してもらいつつ彼女を援護しようとする。しかしピラルクーとエスパーダはこの動きを見越しており、彼らの連携によってADMは奪われてしまう。ユニオン・テオーペは赤いペガサスの上位組織でもあり、獠からこれを聞かされていた香は「兄の仇の仲間に後れを取ってたまるか、絶対に取り戻してやる」と猛烈な勢いで彼らを追撃するも、結局は振り切られてしまう。
「ADMの回収」という任務を達成したピラルクーたちは、もう1つの任務である「アンジーの抹殺」のために動き出す。エスパーダを倒したアンジーは次いでピラルクーと対峙するが、彼女に仲間として以上の情を持つピラルクーからは「銃を置いて逃げろ」と勧められる。海原にADMを諦めさせるためにもここで降りるわけにはいかないとアンジーが言い張る中、ユニオン・テオーペの戦闘ヘリコプターが彼女たちを強襲。自分を庇ったピラルクーが息を引き取る様を見届けたアンジーは、「ADMが海原の手に落ちた」ことを悟り、こうなれば当初の予定通り獠を殺すしかないと覚悟を決める。

海原のため、共に戦ってきた仲間たちの命に報いるため、改めて獠に勝負を挑むアンジー。ユニオン・テオーペの兵士たちを蹴散らした獠はこれに応じ、激しい銃撃戦が繰り広げられる。海坊主が「今まで獠が戦ってきた中でも最強クラスの相手だ」と警戒するアンジーは、さすがの強さを見せつける。しかし相次いで仲間を失いどこか自暴自棄になった彼女と、「アンジーを救ってほしい」という香の願いに応えるため、何よりアンジー自身を助けるために戦う獠とでは覚悟の面で大きな差があった。
アンジーは敗北を認めて銃を下ろし、ここに事件は解決したかに思われた。しかし東京湾の海上に浮かぶクルーズ船からこの一部始終を見ていた海原が、「お前の望みを叶えよう」と嘯きつつADMのアンプルを狙撃銃に仕込み、アンジーを銃撃。ADMによって超人的な能力を得たアンジーは我を忘れて暴れ出し、己を制御できずにもがき苦しむ。撃ち込んだ銃弾すら強化された筋肉の力でむりやり排出する怪物と化したアンジーを相手に獠は苦戦するが、死による解放でしか彼女を救えないと悟った香に懇願され、意を決して勝負に出る。

瓦礫と共に落下しながら、獠は寸分違わぬ位置に弾丸を叩き込むという神業で押し返されそうになっていた銃弾を強引にアンジーの体内に押し込む。これによって心臓を貫かれたアンジーはついに崩れ落ち、短くも楽しい新宿での日々と、自分を救ってくれたことの感謝の言葉を獠たちに残し、息を引き取る。決着を見届けた海原は、“アンジーの望みを叶える”という言葉の通り、自らの手で残ったADMを破棄するのだった。
戦いが終わり、ユニオン・テオーペの存在と彼らの日本での暗躍は警察の上層部も知ることとなる。来生3姉妹が事前に食い止めようとした、独自の傭兵部隊までも抱えるユニオン・テオーペと日本の警察との大規模な抗争は避けられない事態となった。獠と香がアンジーの墓参りをする中、どうやってその存在を嗅ぎつけたのか海原までもが花束を手にここに現れる。銃を手に警戒する獠に、近々また会うことになると予言めいた言葉を残し、海原は墓地を去る。因縁の対決が、間近に迫っていた。

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』の登場人物・キャラクター

主要人物

冴羽獠(さえば りょう)

CV:神谷明

新宿で活動する掃除人(スイーパー)。裏社会ではナンバーワンとも称される凄腕のガンマンである。少年時代に飛行機事故に遭って記憶を失い、反政府ゲリラ部隊に身を置いていたことがあり、現在の実力はこの時に培われたもの。各種銃火器の扱いに長け、さらには格闘術にも精通している。
イケメンな上に均整の取れた体つきをしているが、かなりの好色家で美女に滅法弱く、女性には敬遠されがち。かつての相棒槇村秀幸の妹である香のことは、仕事の上では強い信頼で結ばれた無二のパートナーであり、内心では誰よりも大切な存在だと認識している。

牧村香(まきむら かおり)

CV:伊倉一恵

獠のかつての相棒だった槇村秀幸の義理の妹。兄の死後、その死の真相を突き止めたい想いもあって獠の仕事を手伝うようになり、そのまま彼の新たな相棒となった。
女性の依頼人などに獠が不埒なことをしようとすると、どこからともなく取り出した巨大なハンマーで制裁するのが常。獠に対しては全幅の信頼を寄せる一方、異性として意識している部分もあり、「獠からも信頼されている自覚はあるが、それは友人としてなのか仕事上のパートナーとしてなのか分からない。彼が関係を進めることを望まないなら今のままでいいのかもしれない」との悩みと迷いを胸の奥底に抱えている。

アンジー/アノーニモ

CV:沢城みゆき

戦場で海原に拾われ、彼が率いるユニオン・テオーペの下で暗殺専門の特殊部隊の兵士として様々な任務に従事していた女性。海坊主が「今まで獠が戦ってきた中でも最強クラスの相手だ」と警戒するほどの実力を持つ。
海原を第2の父として慕う一方、彼が進める「天使の涙」の研究に対しては「人間が人間以上の存在になる技術だ」として危険視し、これを阻むために組織を離反。「天使の涙の改良型であるADMの奪取」と、「天使の涙が不要であることを証明するため、海原が“自身の最高傑作”と評する獠を自分の力だけで倒す」ことを目的としている。

外国人観光客のふりをして獠たちの前に現れた時は「アンジェリーナ=ドロティーア・オーシアノス」と名乗っているが、これが本名なのか偽名なのかは不明。兵士としての名である「アノーニモ」は、ラテン語で「名無し」を意味する言葉である。

喫茶店キャッツアイ

YAMAKUZIRA
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