クイーンズ・ギャンビット(ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『クイーンズ・ギャンビット』とは、2020年10月23日にNetflixで配信が始まったドラマである。原作はウォルター・テヴィスが書いた小説『クイーンズ・ギャンビット』だ。第73回プライムタイム・エミー賞では、作品賞リミテッドシリーズ/アンソロジーシリーズ/テレビ映画部門を受賞。事故により唯一の身寄りだった母を亡くし、9歳で孤児になった主人公ベス・ハーモン。養護施設でチェスと出会い、才能を開花させる。アルコール・薬物依存と戦いながら、男性社会のチェスの世界でトップにのぼり詰めるまでの物語。

『クイーンズ・ギャンビット』の概要

『クイーンズ・ギャンビット』とは、チェスの天才少女が薬やお酒の依存症と戦いながら世界チャンピオンにのぼり詰めるアメリカのドラマである。2020年10月23日よりNetflixで配信が開始された。原作はウォルター・デヴィスの『クイーンズ・ギャンビット』。日本では2021年6月に小澤身知子による日本語訳で出版されている。本作はスコット・フランク、アラン・スコットの二人が企画し、スコット・フランクが全話の脚本と監督を担当した。音楽はカルロス・ラファエル・リブラが担当している。この作品は、ゴールデングローブ賞テレビ部門主演女優賞、プライムタイム・エミー賞助演男優賞、助演女優賞、最優秀演技部門、脚本賞、演出監督賞、全米映画俳優組合賞女優賞など、多数の賞にノミネートされた。
精神病を患う母が起こした事故により、9歳で孤児となった主人公のベス。メスーエン養護施設で引き取られ、そこでチェスと出会う。養子にとってくれる家が見つかり、施設から出ると、近くのチェス大会に参加する。チェスの才能を見せつけたベスは、養母アルマとともに各地のチェス大会に参加し、知名度を上げていく。華々しい活躍の裏では、施設で飲まされていた精神安定剤とアルマから教わったお酒の依存症に苦しんでいた。ベスはこの依存症と戦いながら、チェスの世界チャンピオンになる。

『クイーンズ・ギャンビット』のあらすじ・ストーリー

メスーエン養護施設の新入生

孤児を引き取って、引き取り手が見つかるまで面倒を見てくれるメスーエン養護施設に一人の女の子がやってくる。ベス・ハーモン。本作の主人公だ。交通事故により母親を亡くし、9歳で孤児となった。どこか暗い雰囲気のある無口な少女だ。迎えるのは、施設長の女性、ディアドーフ先生。ベスに施設の中を案内し、制服を見繕う。施設には薬の時間があった。緑の薬とオレンジの薬がもらえる。緑は心が落ち着く薬。オレンジは体を強くする薬。薬をもらう列に並んでいると、黒人女性から、緑の薬は夜まで飲まずに取っておけと声をかけられる。彼女の名前はジョリーン。言葉遣いは良くないし、先生には反抗する問題児だ。そして、施設での初めての授業が始まる。早々に問題を解き終えたベスに、先生は地下室で黒板消しを叩いてくるようお願いする。ベスが地下へ行くと、施設の用務員の男性が1人でチェスをしていた。ベスは初めて見るチェス盤に興味を惹かれた。また薬の時間がやってくる。先に薬をもらったジョリーンが口の中に残した緑の薬を見せてきた。ベスも緑の薬を夜に飲んでみる。すると、天井にはチェス盤が現れた。これをきっかけに、ベスはこの薬を夜に飲むようになる。

チェスとの出会い

ベスに対局を勧めるシャイベル。

地下室で見たチェス盤が忘れられないベスは、礼拝の時間に抜け出し、地下へ行く。そこではあの男性がチェスをしていた。男性の名前はシャイベル。メスーエン養護施設の用務員だ。ベスはやり方を教えてほしいと頼んでみるが断られてしまう。ベスは地下に行くタイミングを見計らい、シャイベルに声をかける。シャイベルはチェスは女がやるものではないと言う。ベスは引き下がらず、見て覚えた駒の動きを言ってみせる。そんなベスに興味を覚え、対局してみようと誘う。対局に臨むベスだが、チェスの知識が乏しいベスには分からない駒の動きが出てくる。シャイベルは説明してくれない。ベスはシャイベルと対局をした夜に、緑の薬をまとめて飲むようになっていた。ベスは自分でチェスを理解していく。
ベスは礼拝の時間に抜け出し、シャイベルとチェスをするようになっていた。やるごとに上手くなっていくベス。ベスはどんどんチェスを身につけ、シャイベルを追い詰めるようになった。ベスの力を認めたシャイベルはチェスの定石を教えてくれるようになる。ついにシャイベルに勝てるようになったベスに、シャイベルは『モダンチェスオープニング』という本をくれた。ベスは授業もそっちのけでその本を読んだ。

養護施設の外へ

ある日、ベスがいつも通り地下に行くと、ダンカン高校でチェスを教えているというガンツという男性がいた。ベスはガンツと一局行うことになる。結果はベスの勝ち。ベスはもう一局と、チェスを誘う。ガンツとシャイベル、一度に両方の相手をし、両方を打ち負かした。ガンツは帰る前に記念に一枚とベスとシャイベルの写真を撮っていった。
数日後、ガンツから話を聞いたディアドーフ先生に呼び出されたベス。ガンツがベスを高校に招待すると言う。クラブで同時対局をしてほしいと誘われた。話はまとまり、ベスは高校に行くことが決まる。そんな中、施設では薬の時間に緑の薬の配布が止まった。州法で子どもが飲むことは禁止になったのだ。その頃にはもう、ベスは無自覚にあの薬に依存していた。

ガンツとの約束の日。初めての高校。通された教室には続々と男子生徒ばかりが入ってくる。しかしベスは、圧倒されることなく、冷静に対局を始めるのだった。ベスはこの時のことをシャイベルに楽勝だったと語る。12人を一斉に相手にし、全員負かすのに1時間20分しか掛からなかった。チェスの上達が止まらないベスだったが、裏では薬の禁断症状に困っていた。ついに薬のある部屋の鍵をこじ開け、大量の薬を一度に飲みこむ。さらに薬を盗み出そうとした。しかし、大量の薬を服用したことによる副作用で、ベスは意識を失ってしまう。薬を盗もうとした罰で、ベスはチェスを禁止される。

引き取り手が見つからないまま、成長していくベスとジョリーンはすっかり良い相棒になっていた。ベスは4年ほど施設での生活を送っていた。14歳になった時、唐突にベスの引き取り手が見つかった。荷造りをしていると大切にしていた『モダンチェスオープニング』の本がないことに気づく。ジョリーンにも聞いてみるが見つからず、本は諦めて養護施設を後にした。

ウィートリー家

ウィートリー家で用意された部屋に案内されるベス。

ベスを引き取ってくれたのは、おしゃべり好きで明るいアルマ・ウィートリーと無口なオールストン・ウィートリーの夫婦だ。アルマが家の中を案内してくれる。ベスの部屋も用意され、可愛らしい家具が揃っていた。アルマとオールストンの仲は良くなかった。ベスは学校に通うことになる。学校でチェスができる環境を期待したベスだが、そこにチェスクラブはなかった。翌日、学校から帰ると、アルマからタバコのお遣いを頼まれる。その店には、『チェス・レビュー』という雑誌があった。悪知恵を働かせて『チェス・レビュー』を手に入れるベス。そこにはチェス大会の詳細が書かれていた。チェス大会に出るには参加費の5ドルが必要だ。ベスの学校が始まり、オールストンが家に帰る頻度が減り、ウィートリー家の家計は苦しくなっていた。ベスはシャイベルに手紙を書く。大会の賞金で返済するから5ドルを貸してほしいという内容だ。手紙を出しに行こうとするベスにアルマは薬のお遣いを頼む。店で出された薬は、なんとあの緑の薬。精神安定剤だ。ベスは瓶の半分の薬を隠し、残りをアルマに渡した。ベスはその薬を飲み、頭の中でチェスを始めた。

初めてのチェス公式戦

ヘンリークレイ高校で行われるケンタッキー州大会の日がやってきた。シャイベルから5ドルが届き、大会に参加できることになったベス。会場は男性ばかりだ。会場には1回戦の組み合わせが貼り出される。ベスは近くにいた品のある紳士的な男性タウンズに声を掛け、組み合わせの仕組みを教えてもらう。初戦の相手はアネットという女性だ。アネットは、公式戦が初めてのベスに、時計の動かし方、メモ書き、触れた駒は必ず動かすなどのルールマナーを教えてくれる。ベスはあっさりと勝利した。二戦目、ベスは相手を追い詰めていた。対戦相手からドローかと聞かれ、判断に困るベス。既に対局を終え、タバコを吸いながら観戦していたタウンズと目が合う。タウンズは静かに首を振る。ベスが首を振ると、相手は投了。ベスの勝利となった。大会初日は4連勝だ。大会二日目。次の相手は、タウンズだった。ベスにとって、タウンズとの対局は胸が躍った。この戦いもベスが勝った。

帰宅すると、アルマの様子がおかしかった。オールストンが南西部で無期限勾留されたという。このことが施設に知られたら、ベスは施設に戻らなければならない。しかし、お互いのため、施設には知らせずに一緒に生きることを選ぶ。アルマは、ベスの母親としての人生を歩み始めることを決意する。

ついにベスは今大会の優勝候補であるカレン州チャンピオンのベルティックと戦うところまで勝ち進んだ。しかし、ベルティックは遅刻。コーヒーを遅刻の理由に挙げ、ゲーム中もあくびばかりのベルティックに苛立ち、ベスはペースを乱されていた。追い詰められたベスは席を立ち、お手洗いで薬を飲み、自分を鼓舞する。席に戻ったベスは落ち着きを取り戻し、勝利した。大会はベスの優勝で幕を閉じた。

シンシナティ大会

ケンタッキー州大会での賞金の100ドルが入ったことで、生活は安定を取り戻していた。アルマはチェスで稼げることを知り、ベスをシンシナティで行われる大会に出場させようと計画する。ベスは出場を決め、アルマと二人でシンシナティへ向かった。シンシナティでの初戦はあっさりとベスが勝った。対局後、ベスはケンタッキー州大会で受付をしていたマットとマイクの姿を見つける。大学の控え選手として来ているという。二戦目も冷静に勝つベス。会場にはアルマの姿があった。声を掛けてくれたマットとマイクに母を紹介し、食事をしながら、全米オープンのこと、ロシアが強豪であることなどを教えてもらう。次の相手はマスタークラスのルドルフ。少し苦戦を強いられるベスだったが、ルドルフにも勝利した。シンシナティ大会でもベスは優勝する。ベスはアルマと色々な大会に出場するようになった。アルマからはお酒の味も教わっていた。

敗北

タウンズの宿泊している部屋で雑誌の取材を受けるベス。

髪型も洋服もすっかり垢抜けたベスは、ラスベガスの大会に来ていた。ここで、ケンタッキー州で出会ったタウンズと再会する。『チェス・レビュー』の取材でやってきたと言う。タウンズはベスに取材を申し込んだ。カメラが部屋にあるからと、ベスを部屋に誘うタウンズ。ベスはタウンズに秘かに想いを寄せていたが、結局何もなく対局だけをして、部屋に戻ることになったベス。ベスが部屋に戻ると、アルマがビールを飲みながら、テレビを観ていた。ベスの様子がいつもと違うことに気付いたアルマは、そっとビールを差し出す。ベスは初めて飲むビールを一気に煽った。

ラスベガスでの大会も順調に勝ち進んでいた。会場では天才といわれるベニー・ワッツから声を掛けられる。ベスの記事を読んだという。ベニーはベルティック戦について、記事を読んだだけでベスの見落としを指摘した。自分の見えなかった部分を指摘され動揺するベス。夜はあの薬を飲んで眠りにつく。

翌日のベニーとの対局で、ベスはひどく緊張していた。どんな手を打っても見抜かれているように感じる。結局見落としをつかれて負けた。アルマに悔しさをぶつけるベス。アルマは慰めようとしてくれるが、ベスはきつい言葉で返すことしか出来ない。大会結果はベニーとの同率優勝。でも、ベスは勝ちにこだわっていた。

別れ

知名度を上げているベスはメキシコでの米国選手権に出場を決め、さらにパリの大会にも招待されていた。メキシコへ向かう飛行機の中、アルマはメキシコにマヌエルという文通相手がいるのだと話し始める。メキシコに着き、マヌエルと会うアルマ。二人はすっかり意気投合し、連日遊び歩いていた。一方ベスは二戦を順調に勝ち進めた。次の試合が控える中、ベスはアルマが出かける気配のないことに気付く。事情を聞くとマヌエルは仕事でオアハカに行き、当分戻ってこないという。オールストンのことが連想され、寂しいだろうアルマをベスは慰める。アルマは体調を崩していた。

次の対戦相手はゲオルギ・ギレフという少年だった。彼との戦いは白熱した。5時間続けても勝負がつかない。この日はハーモンの封じ手で中断となった。日を改めると、ベスは別人のように悩むことなく駒を進め、あっという間に勝利した。そして、ベスの明日の対戦相手が発表される。世界チャンピオンであるロシアのプレイヤーのボルゴフだ。しかもベスが不利な後攻の黒盤だった。

ボルゴフとの対局。ベスは押されていた。単純明快で迷いのないボルゴフの手にあっさりと負けてしまった。たまらず客席を見ると、アルマの席を確保して観戦していたマットとマイクの姿が目に入る。アルマはゲームを観にこなかった。部屋に戻り、夢中でボルゴフとの試合を語るベス。しかし、アルマからの反応が全くない。変に思い、顔を覗き込むと、目を開けたまま固まっている。肺炎で亡くなっていたのだ。突然のことで受け入れられないベス。オールストンと連絡を取るも、アルマについては任せると言われただけだった。家はくれると言うがローンが残っている。誰も助けてはくれない。ベスは薬局に通い、あの薬を買う。帰りの飛行機は2席分とった。空いた隣の席に乾杯をし、アルマの好きだったお酒を飲むのだった。

天才の孤独

誰もいなくなった家に帰るベス。ケンタッキー州での決勝相手であるベルティックから、チェスの練習相手になるという提案の電話を受け、ベルティックを家に誘う。ベルティックとの会話はベスの心を軽くした。ベルティックが帰れば、ベスはひとりぼっちだ。アルマがしていたように毛布にくるまってテレビを付け、夜を過ごす。翌日、ベルティックはまたやってきた。ベスは、昼間はベルティックとチェスをし、夜はアルマのベットでタバコを吸いながらチェスの本を読む日が続いた。ベスはベルティックにここで暮らすことを提案し、二人で住むことになる。ベスはベルティックと居ることで、一人の寂しさを紛らわしていた。ベルティックが真剣にベスに好意を抱いていることを伝えようとすると、ベスは話題を逸らす。二人でチェスをする時間が増えると、ベスとベルティックの力量の差は明白になっていく。ベルティックはベスに見えているチェスについていけなかった。

ベルティックはベスの家を出ることを決断。母を失った寂しさを埋めていたことにも気付いていた。ベルティックはポール・モーフィーというチェスプレイヤーの本をベスに渡す。ナイトやビショップを惜しみなく捨てる戦法がベスに似ているという。皮肉のようにモーフィーの偏執病についても触れる。モーフィーの私生活はひどく荒れていたが、チェスをする時は礼儀正しく上品に駒を動かす。彼についたあだ名は「チェス界の誇りと悲しみ」。ベルティックは精神安定剤を指し、彼なりの忠告をしてベスの家を出て行った。

osu16g8
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@osu16g8

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