グリザイアの果実(ゲーム・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『グリザイアの果実』とは2011年にフロントウィングから設立10周年記念作品として発売されたアダルトゲームである。愛称「グリカジ」。
「私立美浜学園」を舞台に転校生風見雄二が5人の少女との恋愛をしていくものである。少女と仲を深めていくと見えてくる辛く重い過去を主人公が向き合い救済し人生を共にしていく物語が展開される。萌えゲーアワード2011大賞部門金賞受賞作品。PSP版とPS Vita版はファミ通クロスレビューシルバー殿堂入りを果たした。

『グリザイアの果実』の概要

『グリザイアの果実(LE FRUIT DE LA GRISAIA)』とは2011年に株式会社フロントウィングから発売されたアダルトゲームである。
フロントウィング設立10周年記念作品であり、萌えゲーアワード2011大賞部門金賞受賞作品に選ばれた。
PC版の対応機種はWindows XP / Vista / 7、Windows 8.1 / 10(PT)。
2013年には対象年齢を成人から17歳以上に下げて、新規イベントCG追加したPSP、PS Vitaでも発売された。
また、2019年には続編である『グリザイアの迷宮』『グリザイアの楽園』と一緒に収録された『グリザイアの果実・迷宮・楽園 フルパッケージ』がNintendo Switch用ソフトとして発売された。
2014年にはアニメ化もされている。

ゲームジャンルは美少女ノベルゲームであり、選択肢により物語が分岐してヒロインを攻略していくものなっている。
攻略可能ヒロインは全部で5人おり、日常(全ヒロイン共通)ルートから選択し次第でヒロイン個別のルートへと行ける仕様になっている。
ヒロイン個別ルートではヒロインと主人公の恋愛、ヒロインが過去の辛い境遇から立ち直るために奔走する主人公の物語が楽しめる。
ハッピーエンドとバッドエンドがあり、こちらも選択肢で分岐する。

特徴は学園ものでありながら、攻略ヒロインが少ないこと、そしてミリタリー要素が強いことである。
通常学園ものは登場人物が多いが故に攻略キャラも多くなるが、本作の舞台である「美浜学園」は在校生が攻略可能ヒロイン5人と主人公だけとなっている。
また、主人公は海外の海兵隊に従事していたことがあるため、軍人気質な面が強いがユーモアに溢れアメリカンジョークを飛ばすこともある。

「美浜学園」に在校するヒロインたちや主人公の過去の癖が強く、鬱要素というものが入っている。
お金持ちのヒロインが幼い頃に誘拐され、助けに来た父親が殺された挙句にその父親の遺体と何日も過ごしたり、または部活の合宿の帰りに教師が運転していたバスが山道を転げ落ちたために遭難して過酷なサバイバルの末部活の仲間が次々と死に一人だけ生き残ってしまったヒロインなどがいる。
また、バッドエンドではヒロインが死んでしまったり、主人公が死んでしまったり、死ななくても精神崩壊してしまってたりとする。

キャラクターデザインはアニメーターの渡辺明夫とイラストレーターのフミオが担当。SDキャラクターはななかまいが担当している。
渡辺明夫氏は本作のOPの監修も担当しており、3DCG・2DCGとアニメーションを組み合わせて作られている。
シナリオ担当は複数で行っており、ヒロインによって担当者が異なる。
担当者は木緒なち・藤崎竜太・桑島由一・かづや。

PC版は予約するとビジュアルファンブック『グリザイアの秘宝』が特典としてついた。
また、ソフマップでは『グリザイアの果実 SOFMAP LIMITED EDITION』というバージョンが発売された。特典内容はタオル・ベッドシーツ・ドラマCDである。

『グリザイアの果実』のあらすじ・ストーリー

はじまり

舞台は2011年5月。海辺の町三嶋崎である。この町には1年前に設立された「私立美浜学園」という全寮制の学校があった。5月24日に主人公風見雄二が転校してくることで物語が始まる。

風見雄二は自身がこれから身を置くことになる「美浜学園」に向かい、大きな荷物を背負って徒歩で移動していた。
三嶋崎に着いたところで警察官に職務質問されていて動けなくなっていたところにひったくり犯が現れ、進行方向にいた雄二に向かってくる。

ひったくり犯を捕まえる雄二

職務質問をしていた警察官が慌てふためいて何もできないでいたが、雄二は向かってきたひったくり犯を締め上げ、警察に引き渡す。
警察官に表彰はいらないと断ったが、そういゆうわけにもいかないと警察署に連行されてしまった雄二は、そこでも刑事に職務質問をされる。

雄二の過去の犯罪歴無し、補導歴、交通違反歴無し、表彰歴無しという、あまりにも真っ白で誰かに細工されたような経歴が引っかかると刑事が噛み付く。
しかし、雄二は「…風見雄二…職業は学生だ…」と繰り返す。警察に捕まったらそう言えと指示されたように。
刑事はひったくり犯の取り調べも進まず、雄二から事情を聞くこともできず疲れ切っていたところに、年配の刑事が現れ釈放を言い渡される。
釈放の理由を聞くと雄二の身元引受人に連絡が取れたとのことだった。そして、その身元引受人が「市ヶ谷(防衛省のこと)」の関係者なので早々の釈放が決まったのだ。
「市ヶ谷」では「掃除のバイト」しかしていないと雄二は言うが、年配の刑事は口だけ笑いながら「掃除とはうまいこと言いましたね」と言った。
防衛省の「特別機関」から連絡を受けたことで雄二の身元が判明したので、警察署を出て「美浜学園」に向かうことに。
警察署を出た時に最初に会った警察官が雄二に「埋立地」の学生かと問うてきて、それにそうだと応えると「気を付けてな、色んな意味で」と奇妙なこと言った。

そして、外に出ると「美浜学園」の学園長の橘千鶴が迎えに来ていた。そのまま千鶴の車に乗り学園へと向かう。

「私立美浜学園」へ到着

「美浜学園」に到着し、歓迎する千鶴

ようやく「美浜学園」に到着した雄二の目には学校というにはオフィスビルのような佇まいと、校門というにはあまりにも無味乾燥な塀。

雄二の感想は「立派だ。とても学校には見えない」というものだった。
千鶴は「味もそっけもない。人間、想像力が大事なのよ」と大げさにも取れる大きなため息を零した。

千鶴は学生だっていい子たちがいると、学校の良さをアピールしようとしていたところに、少女の叫び声が響いてきた。
セミを片手に走る少女と泣きわめきながらそれから逃げる少女が目に入った。
普通とはなんなのか疑問を千鶴に投げかけつつも、なんとか学園長室にたどり着いた。

そこで、千鶴は改めて自己紹介をする。久しぶりという千鶴に便宜上は初めましてではないかと雄二が言うとそうねと千鶴が笑った。
そして、学園の説明を受けることに。
「美浜学園」は学校法人榊学園の運営する私学の学園であり、全国から選ばれた学生たちを集め、日々勉強に励んでいること。
榊学園の母体は、関東一円に私鉄網を東浜(とうひん)急行電鉄グループであることなどを伝えられた。

説明が一通り終わると千鶴は「どう…?あなたのお望み通り、普通の学園生活を送るには最適の環境だと思うけど」と言う。
雄二は平日にも関わらず学園内に人気がないことを質問すると、この学園の学生数は雄二を入れて6人しかいないという事実を知らされる。
それ以外にもいくつか質問をして最後に「ここは普通の学園なのか」と問うと千鶴は柔らかく笑みながら頷く。

以前、雄二がが千鶴に伝えた「普通の学園に入って、普通の学生生活が送りたい」と言った雄二の願いを千鶴は聞き入れたが、この学園は普通とは言えなかった。
しかし、千鶴は雄二自身の境遇を考えるとこの学園しか条件が合わなかったが、あくまでもここは普通の学園だと雄二に言う。

続いて、寮の説明をするからと寮へ移動すると案内役を頼んでいたはずの小峯が見当たらないと言い、千鶴は部屋を見に行ってしまった。

雄二を見上げる幸

残された雄二は癖でスプリンクラーの数を数え、建物のおおよその規模を想像して、正面玄関制圧されてしまった時のためにと非常階段の位置など確かめていると、メイド服を着た少女に話しかけられた。
メイド服の少女は小峯幸(こみね さち)。千鶴が案内を頼んでいた学生で、一年生の少女である。
自己紹介を済ませたところで、幸は雄二をどのように呼んだらいいか聞いてきたので好きに呼んでくれて構わないと告げると、「ユウくん」と呼んで大丈夫かと聞かれ、いきなり距離が詰まったことに少し困惑すると、「風見さん」と呼ぶことになった。
案内を任された幸は雄二を予定していた部屋に案内する。そして、寮内の設備など合わせて説明していく。
幸は何か質問があれば内線で呼びかけてほしいとこの日の説明は終わった。

翌日の寮のエントランス

雄二が日課の早朝ランニングを終えて、寮のエントランスへ向かうと、そこには昨日のセミ持っていた少女と逃げていた少女がいた。
少女たちの名前はセミを持っていた方が入巣蒔菜(いりす まきな)、逃げていた少女が周防天音(すおう あまね)という。

蒔菜の髪の毛を結んであげている天音

蒔菜の髪を天音が結んであげているところに遭遇。声をかけると天音はきょとんとした顔で雄二を見つめるが、すぐに転校生だと気づいた。
雄二が名前を名乗り握手の意を込めて手を伸ばすが、天音の動きが止まり握り返す素振りはない。
どうかしたかと問うと天音はやっと握手に応じ、自己紹介をする。そして蒔菜にも自己紹介を促す。蒔菜は人見知りが激しく、なかなか名乗ることをしなかったが、天音に促され自己紹介をする。
蒔菜からの質問に応えたりとしたが、初日から遅刻したくないという雄二は天音たちとの会話を切り上げる。
天音は雄二に質問があるようだったが、結局やめてしまう。言いたいことは言った方がいいと雄二は言うが、天音は考えがまとまったら聞くことにするといい、雄二を見送る。

教室に到着

学園に着いた雄二は始業まで1時間あるが、教室で待っていればいだろうと、千鶴から聞いた教室に向かう。

発声練習をするみちる

すると、教室の方から発声練習をするかのような少女の声が聞こえてきた。朝の教室に不釣り合いな状況を確認するために近づくいて、教室の窓から中を覗くと少女が一人声を張り上げていた。
発声練習を終えると何かの台詞の練習し始める。
少女は松嶋みちる(まつしま みちる)という。台詞は「あたしの言うことが聞けないっていうの!?」というもので、何度か繰り返し満足いくものを探っている。
手元のメモを見ながらぎこちなく強気な台詞を発していく。
雄二が放送部か、問うとみちるは大きな声を上げて3メートルは飛んで行った。それとも演劇部だったかと雄二が続けるとみちるは誰と聞いてくる。先に自己紹介をするとみちるは転校生だということに驚いていたが、気を取り直して自己紹介を始める。

先ほどのは演技ではなく素であること、クラスの委員長”的”立場であること、そして冗談は通じる方なのかと質問してきた。
雄二はあまり好きな方ではないと言うと、みちるは聞いておいてよかったと零す。
みちるは雄二に特別に自分のことを名前で呼んでいいと言う。本来なら様付けで呼ばなければならないが許してあげるという言葉に雄二は無言で返す。その様子にみちるはテンプレならこれであってるはずだと、まずいことを言ってしまったかと焦りを見せ始めるが、雄二はみちるを名前で呼ぶと安心したように大きく頷いて、ケースから取り出したラムネを1つ食べた。
口に入れたものがなんなのか雄二が聞くとみちるは「あげないわよ」と警戒する。雄二は中身が気になるだけだと返すと、みちるはただのラムネ菓子だと言う。
雄二は一連のみちるの行動からある言葉を思いつき口にする。「ツンデレ」かと。
焦りと羞恥を見せるみちるに追い打ちをかけるように、無理やりブリーチした金髪をとツインテールを指摘すると、みちるは「ツンデレの呪い」なるものがあってこうしていると言う。ツンデレというのは大変なんだなと言うと泣きながら帰れと言われた。

始業時刻が近づくと続々とクラスメイトが教室にやってくる。人数が少ないため一つの教室に学年関係なく集まってくる。
しかし、教室を見ると自分を含めて5人。HRに来ていた学園長が榊さんはまた休みかと問うと、他の生徒たちが「重役出勤じゃないかしら」「最近は夕方からしか来なくなっちゃった」「由美ちゃんどうしたのかなー…」「何かあったんでしょうか…」とそれぞれ反応を示す。
学園長はそのうちに会えるだろうと深く追求しなかった。

放課後の教室にて

放課後になり、再び教室へ向かうと、そこには少女がいた。
少女が雄二に気き、友好的とは思えない雰囲気を醸し出すので、害意はないとアピールすようにフランクな挨拶を口にしながら近づく。
少女は榊由美子(さかき ゆみこ)。昼間に会えなかった生徒だ。
雄二は由美子に話かけるが、由美子は無視を貫き、教室を出ていこうとする。
雄二が後をついていくるの感じた由美子は強く教室のドアを閉めようとするが、雄二はそのドアを押さえ、閉まるの阻止した。

平手打ちを受け止められて驚く由美子

由美子は些か驚いた様子を見せるが、それでも拒絶の態度は崩さない。それでも挨拶をかわそうと雄二が近づくと手を振り上げ頬目掛けて振り下ろそうとしてきたのを雄二は受け止める。
由美子は驚きに目を見開く。そんな由美子に雄二は「榊由美子か」と聞く。由美子はどこか諦めたような、しかし敵意は消さずに「そうだけど」とうなずく。

こうして、雄二の「普通」の学園生活が幕を開けたのだ。そして、一人の少女の秘密を知ったことで少女の暗く重い過去と向き合い、救済していくのだった。
上へ

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