響~小説家になる方法~(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『響~小説家になる方法~(HIBIKI)』とは、柳本光晴による日本の漫画作品およびそれを原作とした映画作品。
出版不況に苦しむ文芸業界。太宰の再来でも顕れないかと嘆くとある編集部に直筆の原稿が届く。編集部員の花井は、応募条件を満たさず、ゴミ箱に捨てられていたその原稿を手に取った。目を通した作品は、これまでにない革新的な作品だった。作者へとつながる唯一の手がかりは、原稿に書かれた名前だけ。これを機に、止まっていた文芸界の歯車が回り出す。

『響~小説家になる方法~』の概要

『響~小説家になる方法~(HIBIKI)』は柳本光晴による日本の漫画作品。『ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて、2014年18号から連載されている。マンガ大賞2017大賞を受賞したことで一躍有名になり、2018年9月14日には『響 -HIBIKI-』のタイトルで実写映画が公開された。
響という一人の天才を通して、天才ではない作家たちを描いている。小説家になる方法と銘打っている割にはタイトルがなかなか回収されなかったが、9巻でようやく回収された。

『響~小説家になる方法~』のあらすじ・ストーリー

雑誌「木蓮」の編集部で新人の花井は、上司のいうような新人で5万冊売れるというちっぽけな話ではなく、小説で世界を変えてしまえるような逸材の到来を望んでいた。そんな中、先輩編集者が開封もせずにゴミ箱へとつっこんでいた厚い封筒を目にする。募集要項にネットへの投稿のみと書かれていたのにも関わらず、直筆で送られてきた上、作者の情報は名前しか書かれていなかった。その作品に興味をひかれた花井は、それを手に取り読み始めた。

「太宰二世にはなれそうか?」と聞かれ、即答で肯定できるくらいに素晴らしい作品だった。だが、連絡先も分からないままでは出版も出来ない。花井は作者である鮎喰響さがしに奔走する。有名な小説家を父に持つ祖父江凛夏が接点となり、ようやく響へとたどり着いた花井は驚愕することとなる。響は高校に入学したばかりの15歳の女の子だったのだ。

響は他人とは違う感性を持つことを密かに気に病んでいたが、新人賞へと送った『お伽の庭』を花井に絶賛されたことで自分は間違っていなかったと安心する。高校で文芸部へと入った彼女は、入学当初から不良の先輩の指を折ったり本棚を倒したりと奇天烈な行動を繰り返していた。そんな響を飄々とした様子で受け入れていた凛夏だったが、響と小説を見せ合ったとき、その圧倒的な才能に、小説という一点において響にはかなわないと悟ってしまう。

響はその人とは異なる感性ゆえに、様々な人とぶつかっていく。メディア露出の多い作家、鬼島仁が凛夏に嫌味をぶつけていた際、その顔を蹴り飛ばしたのもその一つだ。その後、凛夏に迷惑をかけないために鬼島行きつけの店へと突撃した響は、凛夏は関係ないから文句は自分にという。鬼島は『お伽の庭』を読み、その才能を認め、冷静に自分のことを憎む響に疑問を持つが、その理由として今の自分の小説がつまらないことを何でもないことのように口にした。響は才能が尽きた人間は死んだものだと考えていたため、鬼島に今後の余生を楽しんでくれと嫌味でもなく純粋な気持ちで言い放つ。

新人賞の授賞式では、同じく新人賞を受賞した田中康平を壇上でパイプ椅子を使い殴り倒している。といっても、前日に吉野に贈ってもらったゴスロリを着て現れた響を話題性のための受賞だと決めつけて先にしかけたのは田中だ。その田中も『お伽の庭』を読み、わざわざ文化祭まで足を運び響に自分の作品の感想を聞きに行くようになる。どうやら響の作品には人を変えるほどのものがあるらしい。

同時期、以前からプロになるという話を花井と進めていた凛夏は、二世作家として小説家デビューすることとなる。『四季降る塔』という作品を発表し、メディアでも大きく取り上げられるも、響が同じ文芸部員の関口花代子と書店にて作品を見かけた際に酷評されている。また、部室にて面と向かってそれを告げられた凛夏は響と殴り合いのケンカになり、12月15日の芥川賞・直木賞のノミネート作品発表の日まで絶交すると宣言。だが、響がダブルノミネートしたのに比べ、凛夏は候補にすら挙がらなかった。ついに嫉妬が爆発した凛夏は響とは友達ではないと言ってしまうが、それが本心ではないと気づいていた響は一度去り、凛夏が追いかけてくるのを待つ。案の定泣きながら追いかけてきた凛夏の抱擁を受け入れ、『四季降る塔』のダメ出しを始める。

文化祭で響の小説に心底惚れた花代子は、自分も響のように書いてみたいと思うようになった。しかし、ライトノベルの新人賞へ作品を送っても落選が続き落ち込んでいた。そんな時、たまたま喫茶店で響と凛夏が花井と話しているところをみかける。チャンスだと思った花代子は、花井に自分の作品を読んでもらいたいと言う。花井には文章や構成の粗さのみを指摘され、完成させていること自体がすごいことだと褒められるも、響にはロマンしか感じないファンブックのようだと言われてしまう。落ち込むかに思われた花代子だったが、10日後には書き直して部室へと持ち込んできた。そして、言葉では何が悪いのかうまく伝えられないからと、響もヴァンパイアという同じ題材で小説を書いて来ていた。才能の差に花代子が落ち込むかもしれないと危惧した凛夏だったが、花代子の口から出た言葉は「これ、パクッてもいい!?」だった。凛夏は頭を押さえながらも一応パクったものを投稿しないように釘を刺した。

響が芥川賞・直木賞ダブル受賞をし、暴力記者会見を終え、無事『お伽の庭』は出版された。そして響が高校に入学してから1年が経ち、新入生も入部して心機一転という時、花代子は自身の犯した過ちに自己嫌悪していた。凛夏に釘を刺されていたのにっも関わらず、響の作品を興味本位でそのままライトノベルの新人賞に投稿してしまったのだ。かかってきた電話をとると、大賞を受賞したという連絡だった。そのことを響に告げると、出版社に謝りに行くということになった。その中で、一ツ橋テレビの津久井が鮎喰響は”あの響”なのではないかと感づく。津久井はやり手のプロデューサーで、響のドキュメンタリー番組を無断で作成し始める。それを知った響はテレビ局の社長を人質に取り、カウントダウンが終わったら指を折ると脅したが、響は折れないと考えた津久井は止めなかった。結果、響は自分の指を折り、それを知らせる前に津久井が番組中止を告げた事でこの一件の幕は閉じた。

『響~小説家になる方法~』の登場人物・キャラクター

鮎喰 響

主人公。小説を書くということにおいて、他の追随を許さない天才的な感性を持っている。冗談が通じず、殺すといわれたら相手を殺そうとするなど、一般的な感性を持つものには理解できない言動が多くみられる。月に本を2~30冊読み、登校中でさえ本を手放さない。幼馴染に病的なまでの響好きのイケメンがいる。

祖父江 凛夏

高名な小説家である祖父江秋人の娘。フィンランド人の母とのハーフで、金髪で小麦色の肌をしている。なんでもそつなくこなす天才肌だが、こと小説に限っては響に敵わない。一番負けたくない分野で負けたことで響とケンカをしたこともあったが、今では受け入れ、自分の小説を書くことに集中している。

花井 ふみ

雑誌『木蓮』編集部の編集者。響を見つけた張本人。凛夏、響と女子高生のプロ作家を次々と世に出したことから有能な編集者として名が知られることに。しかし、そんな評判とは裏腹に響に振り回される日々。

関口 花代子

ちょっとバカな普通の女子高生。ライトノベルのファンでヴァンパイアが好き。
響と同じ文芸部所属し、響の小説を人生で一番読んだと思うくらいには読み返している。そうしているうちにプロよりもすごいのではと思い、ライトノベルの新人賞に出したらどこまでいくのかという興味から勝手に応募してしまう。

『響~小説家になる方法~』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

山本春平が芥川賞を受賞した会見で発した言葉

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