バジリスク〜甲賀忍法帖〜(Basilisk)のネタバレ解説・考察まとめ

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』とは、山田風太郎の小説「甲賀忍法帖」をせがわまさきが漫画化した作品。2005年にTVアニメ化もされている。この物語は徳川将軍家の世継ぎ問題に巻き込まれた伊賀と甲賀、その両家の跡取りが愛し合いながら殺し合いをする運命をどのように受け止めるかを描く時代劇漫画。

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』の概要

バジリスク 〜甲賀忍法帖〜とはせがわまさきによる漫画作品で全5巻。
2003年4号から2004年13号にかけてヤングマガジンアッパーズにて連載。
2005年、GONZOによりTVアニメ化され原作にはないオリジナルエピソードも盛り込まれている。
日本国内で初となるアニメファンドの投資対象作品として制作される。
オープニングを陰陽座が手掛けており、サブタイトルの「鬼哭啾啾」や「来世邂逅」等は陰陽座の曲のタイトルから使用されている。
2007年、2014年にパチンコ化。2009年パチスロ化され好評を得て2016年までに4機種発売されている。
2015年に作家の山田正紀が、バジリスクから10年後の続編小説「桜花忍法帖~バジリスク新章~」を執筆している。

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』のあらすじ・ストーリー

第1巻

伊賀忍者の朧(左)と、甲賀忍者の弦之介(右)。

慶長十九年、駿府城にて天下人・徳川家康は三代将軍の世継ぎのことで長子・竹千代派と次子・国千代派が骨肉の争いをしていることにより頭を抱えていた。そこで徳川幕府後見人である南光坊天海の助言により、対立関係にあった甲賀と伊賀という忍者の二代宗家を争わせ、十人対十人の忍法殺戮合戦を決行し、結果どちらが生き残るかを賭けて、三代将軍の世継ぎ問題を解決させることにした。だが憎しみ合う両家のそれぞれの跡取り、甲賀弦之介と伊賀の朧は深く愛し合っていた。徳川家康は駿府城で、甲賀卍谷頭領の甲賀弾正が連れてきた、蜘蛛男の様な体型を口から粘り気のある痰を飛ばし相手の動きを封じることのできる風待将監と、伊賀鍔隠頭領のお幻が連れきた、若くて華奢だが黒縄という糸を使って岩をも切り裂くことができる夜叉丸に御前試合をさせた後、先代服部半蔵と交わした「不戦の約定」を解いた。不戦の約定とは激化していく甲賀と伊賀の両者が争わないように先代服部半蔵が間に立ち定めた約定である。
徳川家康は、甲賀と伊賀の十人の名前が乗っており不戦の約定が解かれたことも記され、五日晩日に駿府城まで持ってきた方が勝者と書かれた「人別帳」を甲賀と伊賀に渡した。
甲賀弾正は風待将監に人別帳を届けるように渡し、伊賀のお幻も夜叉丸に伊賀に届けるように伝え渡した。しかし夜叉丸が伊賀に戻る際、弾正とすれ違った時に人別帳は弾正にスリ取られる。その後二人になった弾正は不意をついてお幻の喉を毒針で刺すが、その毒針で弾正もお幻に刺され相討ちとなる。そして弾正がスリ取った伊賀側の人別帳はお幻が使役している鷹が持ち去り、伊賀の手に渡って不戦の約定が解かれたことを知るのであった。
弾正と共に駿府城に赴いていた甲賀の風待将監、占いで凶事が出て様子を見に向かった地虫十兵衛は不戦の約定を解かれたことを先に知った伊賀衆に討ち取られてしまう。風待将監が持ち帰るはずだった人別帳はこの時点で伊賀の手に渡り、甲賀に不戦の約定が解かれたことを知られない為に燃やされてしまうのであった。そのことを知らずに、甲賀弦之介と護衛の鵜殿仗助は伊賀の朧の元に訪れていた。そして伊賀の雨夜陣五郎により鵜殿仗助は討ち取られてしまうのであった。

第2巻

甲賀衆より先に人別帳を手に入れて不戦の約定を解かれたことを知った伊賀衆は、甲賀の風待将監、地虫十兵衛、鵜殿仗助を次々に葬り去る。一方その頃甲賀弦之介は、伊賀の隠里で朧とのんびりしていた。伊賀衆が弦之介に手を出さなかったのは弦之介の瞳術を恐れ、警戒していた為である。
一方甲賀の里では、伊賀の薬師寺天膳、簑年鬼、筑摩小四郎、小豆蠟斎、蛍火の5名が奇襲をかける。しかし不意を付いたはずの伊賀衆だったが甲賀の室賀豹馬と霞刑部によって失敗に終わり逃げ帰る。不戦の約定があるはずなのに襲ってきた伊賀衆を不信に思った室賀豹馬は、駿府城に向かう道で東海道がある北から攻めてきた伊賀の方向に何かあるのではないかと勘繰り、如月左衛門と霞刑部を東海道に向かわせるのであった。東海道で二人は、駿府城から帰ってくる途中の夜叉丸を見つけ、如月左衛門の忍法で伊賀の薬師寺天膳の声色を使い、不戦の約定が解かれたことを聞き出した。如月左衛門は、伊賀の夜叉丸を葬ったあと伊賀の屋敷に忍び込む。討ち取った夜叉丸に変装し、人別帳を手に入れた如月左衛門は朧に出会ってしまい、朧の見た者の忍法を破ってしまう「破幻の瞳」の力によって正体をばらされてしまう。
しかしそこに、一緒に同行して身を潜めていた霞刑部が助太刀をし、人別帳を伊賀の里に滞在していた甲賀弦之介の下まで届けるのであった。不戦の約定を解かれたことを知った甲賀弦之介は、甲賀の里がある卍谷に帰るべく、伊賀の足止めにきた忍者軍団を敵意を持った相手を自決に追い込むことのできる「瞳術」によって薙ぎ払い、朧が弦之介を呼び止めようとするが振り向かずに立ち去るのであった。
そして、朧は味方の忍法さえ解いてしまう自分の目に危機を感じた後、七日七夜閉じて開かぬという「七夜盲の秘薬」を自らのまぶたに塗り破幻の瞳を封じてしまうのであった。

第3巻

人別帳を見た甲賀弦之介は、駿府城に行き徳川家康と服部半蔵に不戦の約定が解かれた理由を聞きに行く為、あえて人別帳を伊賀に返す(人別帳を持ったまま駿府城に行くと甲賀の勝ちとなる為である)。また人別帳と一緒に書状が渡され中身には、人別帳に乗っている残りの甲賀衆と一緒に東海道から駿府城に向かうこと、伊賀から攻撃してくるのなら戦は好まぬが迎え撃つことを書き記していた。これは伊賀が甲賀卍谷に攻めても、人別帳に乗っている者たちはいないことを明確にし、無益な殺生をさせない為である。
伊賀の蛍火と簑念鬼は、甲賀弦之介達の居場所を確認する為に先行で追いかけた。弦之介たちを見つけた二人は奇襲し、弦之介の目を七夜盲の秘薬によってふさぐことに成功する。しかし、室賀豹馬の瞳術と如月左衛門の変装によって、伊賀の二人は討ち取られるのであった。
甲賀を先回りにする為に、桑名の船場から船に乗った伊賀の朧達は甲賀の霞刑部に襲われる。天膳は、朧の弦之介にお慕いしている気持ちの未練を断ち切る為に無理やり犯そうとしたが、床や壁に同化できる忍法を使う霞刑部の手によって天膳の首を折るのであった。しかし、不老不死(生まれたときより持っている力で天膳と一緒に生まれるはずだった双子の片割れが天膳の体内住み着いている)の力をもつ天膳の手によって霞刑部は壁に同化したままの状態で殺されてしまう。ここにきて甲賀、伊賀両名4名ずつになるのであった。

第4巻

甲賀弦之介達の元に伊賀の天膳が奇襲をかけるが、室賀豹馬の瞳術によって返り討ちにあうのであった。天膳を探しにきた筑摩小四郎は、室賀豹馬と戦い見事室賀豹馬を討ち取る。しかし、救援に駆けつけた陽炎の情欲に身を任せるときに吐息が毒になる忍術によって筑摩小四郎も討ち取られてしまう。
その後、甲賀弦之介と陽炎、如月左衛門は岩の影に隠れ、様子を見に来た伊賀の朧と朱絹を討ち取ろうとするが、将軍家ご世子竹千代様の乳母の阿福が行列を連れてたまたま通りかかり、不意打ちは失敗に終わった。
また、この時朧と朱絹は阿福に不戦の約定を解かれた真意(徳川の世継ぎ争いの為に戦わされていること)を初めて知らされ、朧は阿福と一緒に駿府に行くことを決める。岩の影で隠れて動向を見聞きしていた甲賀衆も不戦の約定を解かれた真意をここで初めて知ることになった。そして討ち取られたはずの天膳は生き返り朧たちの元へ向かうのであった。

第5巻

甲賀の如月左衛門は伊賀の薬師寺天膳に変装し朱絹を呼び出すことに成功。そして陽炎と二人で討ち取るのであった。しかし如月左衛門は蘇った薬師寺天膳に殺されてしまう。
捕まった陽炎は甲賀弦之介を呼び出すために、薬師寺天膳に拷問されてしまうのであった。助けに来た甲賀弦之介は薬師寺天膳の首を刎ねる。しかし、首を刎ねても不死の体を持つ天膳は、生き返ろうとする途中で七夜盲の秘薬が解かれた朧の破幻の瞳によって不死の力を破られてしまい、完全に死んでしまう。甲賀と伊賀の因縁と人別帳の為に死んでいった仲間達の為に、戦いを避けられないと悟った弦之介は朧と対峙する。しかし「弦之介さまの手に掛かって死にとうございます」と朧は死を望んだ。弦之介は「そなたを斬れぬ」と朧を殺すことはできなかった。拷問の傷により死ぬ間際にその場面を目にした陽炎は、最後の力を振り絞って毒を使って弦之介と心中しようとする。心中しようとした理由は好きな想いが届かなくこのまま二人で逃げても安住の地が無いと悟った為である。
しかし陽炎の毒は、朧の破幻の瞳で止められてしまい心中できないまま一人で力尽きてしまった。陽炎の毒を少々当てられた弦之介は倒れ、その後二人は阿福の軍に取り囲まれてしまい、気を失っている弦之介を阿福の軍から殺されないように助けるため、服部半蔵の前で果し合いをすることを決意し、その場をおさめ甲賀弦之介と朧は決闘をすることになるのであった。そして朧は弦之介を愛するが故に殺すことができないので決闘が始まってすぐに目の前で自害し、それを七夜盲の秘薬が解かれてすぐ見た甲賀弦之介は伊賀の勝ちなりと人別帳に書き記し自害してしまう。ここで甲賀と伊賀の戦いは終りを告げたのであった。

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』の登場人物・キャラクター

甲賀卍谷衆

甲賀弦之介(こうが げんのすけ)

CV:鳥海浩輔
本作の主人公。甲賀弾正の孫で室賀豹馬は叔父にあたる。殺意を持って襲いかかってくる敵を自滅させる瞳術使い。甲賀と伊賀の和平に好意的であり、基本的に争いを好まない性格。また、次期当主としての統率力もあり無慈悲に敵を葬り去ることも厭わない冷徹さや苛烈さもある。最後は朧を抱き抱えながら川の中で自害した。

陽炎(かげろう)

CV:早水リサ
普段は冷静な性格だがお慕いしている弦之介のことが絡むと途端に狡猾で冷酷な一面を持つ。体内に毒を持っており情欲に身を任せると息が毒になる、自身には制御できない忍法を使う。代々甲賀弾正家に匹敵する家柄をもつが体質の忍法のせいで結ばれることができなかった。最後は薬師寺天膳に壮絶な拷問をされた後、朧を殺せない弦之介を見て一緒に心中しようとしたが朧の破幻の瞳で無効化されてしまいそのまま力尽きる。

如月左衛門(きさらぎ さえもん)

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