NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ-発明中毒篇-

NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ-発明中毒篇-のレビュー・評価・感想

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NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ-発明中毒篇-
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天才喜劇人「チャーリー・バワーズ」が永年埋もれていた理由

アメリカ生まれの喜劇人、チャーリー・バワーズが1920年代(日本では大正時代)に監督・主演したサイレント映画4本『たまご割れすぎ問題』『全自動レストラン』『ほらふき倶楽部』『怪人現る』と、アニメーション2本『とても短い昼食』『オトボケ脱走兵』の6本を纏めた映画。
サイレント映画時代の外国の喜劇人と言えば、チャップリンやバスター・キートン、ハロルド・ロイド等の有名どころが挙げられるので、チャーリー・バワーズは完全に無名な喜劇人の扱いとなってしまっている。
しかしながら、モノクロアニメの表情の豊かさや風刺的な要素は全く古びておらず、しなやかな女性の描き方は、色気を感じさせてくれる。
新聞漫画家のキャリアを持つチャーリー・バワーズの手腕を見て取れるが、それは実写でも充分に発揮している。
『全自動レストラン』は、タイプライターの様な大きな機械を厨房に造り、客の注文に応じてボタンを押すと、天井に設置された大きなチューブからテーブル上の皿に料理が盛られるという、実に斬新な発想が描かれている。
ところが主人公が失恋で落ち込み、機械に突っ伏して泣き出して、それぞれのボタンを勝手に押す事になり、客側に様々な料理がブチ巻かれて大騒動になる。この辺の漫画的ドタバタな要素もしっかり踏まえている。
他にも、鉢植えから猫が生え、生きたまま外に行ったり、牡蠣の中身が飛び出して両眼を開きながら周囲を見渡して殻に戻ったりと、SF的要素がふんだんに見られる。
チャップリンの『モダン・タイムス』で、彼自身が機械の歯車に挟まれるシーンがあるが、それ以上に拘った映像が見られるのが、一番の特徴である。
喜劇人と言うよりも「映像オタク」と思わせる作品群。
喜劇映画史に永い事埋もれてしまった理由は、そのオタクの部分が秀逸で、本人も拘り過ぎたせいかもしれない。