僕の血を吸わないで(ラノベ)のネタバレ解説・考察まとめ

『僕の血を吸わないで』とは、阿智太郎によるライトノベル。第4回電撃ゲーム小説大賞の銀賞を受賞した作品であり、執筆当時はまだ高校生だった同作者のデビュー作である。吸血鬼をヒロインにしたドタバタコメディであり、破天荒ながらも愛らしいキャラクター造形で好評を博した。
高校生の花丸森写歩朗は、ハンターに追われる吸血鬼の少女・ジルと出会い、同情して彼女を匿う一方で「僕の血を吸わないで」と釘を刺す。森写歩朗の周囲の面々、ジルを追うハンター、恋心から森写歩朗の血を吸いたがるジルの、慌ただしい日々が始まる。

『僕の血を吸わないで』の概要

『僕の血を吸わないで』とは、阿智太郎によるライトノベル。
吸血鬼をヒロインにしたドタバタコメディであり、破天荒ながらも愛らしいキャラクター造形で好評を博した。

第4回電撃ゲーム小説大賞の銀賞を受賞した作品であり、執筆当時はまだ高校生だった阿智太郎のデビュー作である。本作で受けた評価で自信を得た阿智太郎は、以後精力的にラノベ作家として活動し、新しい作品を次々と執筆していった。
同じ作者による『僕にお月様を見せないで』とは世界観を共有しており、一部のサブキャラクターが少しだけ登場している。時系列としては、『僕の血を吸わないで』の最終巻の4年後に『僕にお月様を見せないで』の物語が始まる形である。

所属する演劇部の公演の準備に明け暮れていた高校生の花丸森写歩朗(はなまる しんじゃぶろう)は、ある日偶然から吸血鬼の少女パテキュラリー・ジルコニア・ブロードと出会う。彼女が吸血鬼撲滅を狙う組織「ブラックウイナー」に追われていることを知った森写歩朗は、同情して家に匿う一方で、「僕の血を吸わないで」と釘を刺す。
優しい以外に取り柄のない森写歩朗の家に突如やってきた外人の美少女の存在に演劇部の面々が騒然とする中、ブラックウイナーのハンターたちもジルを狙って動き出す。そのジルはジルで、長い孤独にすっかり疲れ果て、「自分の眷属になってずっと一緒にいてほしい」と森写歩朗の血を吸うことはできないかと考え始める。

『僕の血を吸わないで』のあらすじ・ストーリー

森写歩朗とジルの出会い

主人公の森写歩朗(左)と、ヒロインのジル(右)。

高校生の花丸森写歩朗(はなまる しんじゃぶろう)は、部長の倉地香(くらち かおり)にどやされ、後輩の三石秋子(みついし あきこ)に「おもしろい先輩」として観察対象にされつつ、所属する演劇部の公演の準備に明け暮れていた。台本すら決まらない中、香が「トーマス(森写歩朗のあだ名)が書けばいい」と言い出し、森写歩朗の反対虚しくこれにGOサインが出てしまう。
「台本なんて言われてもネタがない、どうしよう」と悩む中、森写歩朗は外国人の女の子が倒れているのを発見。彼女は何者かに追われているらしく、森写歩朗は深く考えずに自宅に匿うことを決める。森写歩朗の父で放任主義の花丸辰太郎(はなまる たつたろう)は、「息子に恋人ができた」と喜ぶだけで、これまた深く考えずに彼女との同棲を認める。

少女はパテキュラリー・ジルコニア・ブロード(通称ジル)と名乗り、自分が吸血鬼であることを明かす。ジルは吸血鬼撲滅を狙う組織「ブラックウイナー」に追われており、行き場も味方もいない状態だった。実際にジルの力を見た森写歩朗はこの話をあっさりと信じ、傷が癒えるまで家に居ていいと伝える一方、「僕の血を吸わないで」と釘を刺す。
優しい以外に取り柄のない森写歩朗の家に突如やってきた外人の美少女の存在に演劇部の面々が騒然とする一方、ジルはジルで長い孤独にすっかり疲れ果て、「自分の眷属になってずっと一緒にいてほしい」と森写歩朗の血を吸うことはできないかと考え始める。これが原因でジルは森写歩朗の下を去るが、この時にはブラックウイナーのハンターが彼らの住む街にやってきていた。

ブラックウイナーの脅威

クラレンスというその女ハンターもまた吸血鬼で、ブラックウイナーによって心臓に爆弾を埋め込まれ、むりやり従わされていた。自分より遥かに長寿の吸血鬼を相手に手も足も出ず、殺されそうになるジルだったが、そこになぜか父親が隠し持っていた火器を手にした森写歩朗が駆け付ける。
ジルを助け出したまではいいものの、強力な武器を持ってはいても森写歩朗はそれを使いこなすことができず、2人は再び追い詰められる。しかし「しょせんは素人」と彼らを侮っていたクラレンスは、森写歩朗とジルの咄嗟の連携にまんまと出し抜かれ、銃を突きつけられる。後はトドメを刺すのみとなったところでジルは「同族は殺せない」と泣き言を言い出し、代わりに銃を構える森写歩朗もどうしても引き金を引くことができなかった。

そんな森写歩朗とジルを見たクラレンスは、すっかり毒気を抜かれて「いいかげんブラックウイナーに従うのも嫌になってきたところだ」と戦闘を放棄。心臓の爆弾も経年劣化で電波を受け付けない状態にあったが、ならばとブラックウイナーは長距離ミサイルを発射する。ジルとクラレンスは森写歩朗から少々強引に血を吸って力を回復し、吸血鬼の持つ超能力でミサイルを跳ね返し、街の危機は去る。
クラレンスは「吸血鬼の孤独を味わいたくないなら、森写歩朗から離れてはダメだ」とジルに忠告して街を去る。1度は「もう一緒にいる資格が無い」と出奔したジルだったが、森写歩朗に再び迎え入れられ、花丸家に留まることを決める。

卒業式と波乱の再会

ブラックウイナーはジルの生存とその居場所をつかんでおり、その後も何度も刺客を送り込んでくる。
侍の血を引く(と信じ込まされている)西洋剣士ミルカ・ベル・モンドー。ジルの姉でより強力な力を持つ吸血鬼のサファイア。ブラックウイナーのエージェントにして、様々な装置と兵器を搭載したロボットのマイブ。
森写歩朗とジルは協力してこれらの敵から逃げ惑い、必死に誤魔化し、説得を重ね、なんとかブラックウイナーの攻撃から逃れ続ける。利用されていることを知ったモンドーはブラックウイナーを見限り、クラレンス同様に胸に爆弾を埋め込まれていたサファイアはこれが解除されたことでジルと共に生きる道を選ぶ。

月日は流れ、森写歩朗が高校の卒業式を向かえた日、彼がジルやサファイアと共に暮らす花丸家にフロイことフロイデッド・アブソリュートゥ・アンキュサス・ブロードという吸血鬼がやってくる。彼はジルやサファイアを吸血鬼にした人物でもあり、このことから彼女たちの“父親”という立場でもあった。
フロイはブラックウイナーの追撃から逃れるべく、娘たちを連れて安全な場所に避難しようと考えており、2人が森写歩朗から離れたくないと懇願するのを聞いて「それなら早く吸血鬼にしてしまえばいい」と言い切る。ジルたちが戸惑う中、フロイは森写歩朗にも「娘を大切に思ってくれるなら、君も人間を捨てる覚悟を固めろ」と要求する。

人間と吸血鬼の歩んだ結末

ジル1人の始末に失敗を重ねたブラックウイナーは、その威信に懸けて彼女を抹殺するべく、長であるドクター・アラキ自身が出陣。実は彼もまた吸血鬼であり、「吸血鬼を野放しにすれば人類全体が吸血鬼と化し、血を吸う相手がいなくなって共倒れになる」との思いから同族を狩り続けていたのだった。
この時、これまでブラックウイナーに協力していた科学者が「吸血鬼を人間に戻す薬」を2人分だけ完成させていた。紆余曲折を経てこれを手に入れた森写歩朗は、アラキによってフロイやサファイアたちが倒れていく中、「ジルだけは死なせたくない」と彼女にこれを投与する。薬が効き始めるまでの時間を稼ごうとアラキに立ち向かった森写歩朗は彼によって殺害され、これに絶望したジルは「森写歩朗の仇を討つ」ことを決意して彼の遺体から血を吸う。

ここに瀕死のフロイが現れ、「あれだけ嫌がっていたのに、結局娘のために吸血鬼になったのか」と微笑む。「ジルがピンチなんだ、彼女が大切なら生き返れ」と最期の力を振り絞ってフロイが叫ぶと、彼から命を分けてもらったかのように森写歩朗は復活。ちょうど人間化を果たして戦えなくなったジルの代わりにアラキの前に立ち、連戦で消耗していた彼を倒す。クラレンスの時と同様、ミサイルで全てを吹き飛ばそうとするアラキだったが、森写歩朗はこれをもなんとか破壊し、爆風と共に姿を消す。
2年後。旅先でクラレンスと出会った辰太郎は彼女と結婚し、モンドーは料理人としての道を歩み始め、サファイアは新たな旅に出立。ジルは辰太郎の養女となり、かつて森写歩朗が通っていた高校を卒業しようとしていた。そんなある日、彼女の前に森写歩朗が現れる。長い時をかけてようやく動けるまでに回復した森写歩朗は、サファイアと香と秋子に見つかり、「今までどこにいた」、「ちょうどいいから自分たちに付き合え」と追い回され、必死になってジルの下まで逃げてきたのである。

その3人が追いかけてきたことを知った森写歩朗は、挨拶もそこそこに再び逃げようとするが、ジルに「一緒に行きたい、自分を吸血鬼にしてほしい」と懇願される。本気で望むのであればとそれを承諾する森写歩朗だったが、「僕の血を吸わないで」とかつてと同じ約束をジルに伝えるのだった。

『僕の血を吸わないで』の登場人物・キャラクター

主要人物

花丸森写歩朗(はなまる しんじゃぶろう)

高校生の少年。学年屈指の劣等生で、筋金入りのお人よしで、アホで間抜けで高所恐怖症。
敵であっても傷つけることを躊躇する優しい気質だが、大切な人のためなら命をも投げ出す無謀と紙一重の勇気も持っている。

ジル/パテキュラリー・ジルコニア・ブロード

本作のヒロイン。180年の年月を生きる吸血鬼。本名はパテキュラリー・ジルコニア・ブロードだが、作中ではもっぱら略称の「ジル」で呼ばれる。
長い年月を孤独に生きる吸血鬼としての生に苦しんでおり、森写歩朗の底抜けの優しさに惹かれていく。

人間

花丸辰太郎(はなまる たつたろう)

森写歩朗の父親。ツアーコンダクターを自称しているが、実際には犯罪に近いものも含めて様々な仕事をしているらしく、自宅には吸血鬼にも致命傷を負わせうる大型ライフルや手榴弾を隠している。
物事を深く考えない楽観的な性格で、息子に対しても放任主義を貫く。女性遍歴も派手で、森写歩朗についても「家の前に捨てられていただけで、俺の息子なのは間違いないが、誰が母親なのかはよく分からん」と語っている。

倉地香(くらち かおり)

森写歩朗の所属する演劇部の部長。学園でも随一の美少女として知られ、家が裕福なこともあって非常に気位が高い。自分に一切なびかない森写歩朗にイラつき、彼を「トーマス」と呼んで蔑みつつ、むりやりにでも従わせようとしている。

三石秋子(みついし あきこ)

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