人は見た目が100パーセント(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『人は見た目が100パーセント』とは、製紙会社に勤める理系女子達が「美」を研究対象として奮闘する大久保ヒロミのコメディ漫画作品である。仕事に没頭するあまり、美容や女子力と縁のなかった3人の女性研究員が、ファッションやメイクなど外見に関する研究で「女子モドキ」を脱するべく奮闘する。講談社の『BE・LOVE』で、2014年の第1号から2015年の第23号まで連載し、単行本は全5巻。2017年にはフジテレビでドラマ化し、桐谷美玲、水川あさみ、ブルゾンちえみが主演を務めた。

出典: www.asahicom.jp

外見がおざなりになっていることに危機感を覚えた3人は、終業後に美に関する研究を始めた。

「女子」と「もどき」を掛け合わせた造語で、作中に何度も登場するワード。女子でありながら、おしゃれや美容から離れた日々を過ごす中で女子力からかけ離れてしまった女性のことを指す。作中では城之内、佐藤、前田が自分達を自称する時に使われる。仕事において、外部との接触が少ないために外見がおざなりになっており、流行もわからず世間の「ステキ」からは遠い場所にいる。そんな自分達に危機感を覚えた城之内・佐藤・前田の3人は、外見から「女子」になることを目指し、仕事が終わった後にひっそりと美容の研究を始めた。

ネガティブ亡霊

ネガティブ亡霊を心の奥に住まわせている3人は、せっかく褒められても照れからつい自虐に走ってしまう。

女子力からかけ離れた生活を送っていた3人の心に巣食うネガティブマインドのこと。人に見られることや褒められることに慣れていないために、せっかく研究の成果が出て綺麗になっても、いざ褒められると自虐に走ってしまう。更に総務課のステキ女子である岸根と益田が登場すると、自分達よりも遥かに高い完成度のおしゃれをしていることが多いため、そんな彼女達を見て自分達と比べて卑屈になってしまうことがある。3巻実験20『いい匂いだといってくれ』で香水選びをした際も、美人が付けると良い香りでも自分達が付けると「草」や「法事帰り」の香りになってしまいそうという理由から、結局香水を選ぶことができなかった。

『人は見た目が100パーセント』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

総務部女子「それくらいやってますか?っていう話ですよ」

出典: pbs.twimg.com

いつでも可愛くオシャレな総務課女子の岸根(左)と益田(右)。厳しいことを言う時も笑顔だが、その迫力はなかなかのもの。

2巻実験10『天下分け目のヘアアレンジ!』で、流行のヘアアレンジを研究していた3人。3人はポピュラーなアレンジのひとつである編み込みに挑戦するが、全くうまくいかずに断念した。結局、100均のグッズを使ってなんとかおしゃれなアレンジが完成した。編み込みはできなかったが、充分に可愛い髪型になったと喜んでいた3人の元に、総務課の益田と岸根が業務の件で研究室を訪れた。いつでもおしゃれを楽しみ可愛い総務課の2人は、3人が諦めた編み込みヘアをマスターしており、生粋のオシャレ女子達の眩しさに思わず城之内達は目を瞑る。
城之内は思い切って総務課の2人から編み込みのコツを教わろうとするが、2人は編み込みのコツを「慣れ」と答えた。あまりにも綺麗に仕上がっていた編み込みアレンジの2人を前に、「慣れ」以外にも理由があるはずだと信じている研究室の3人は、彼女達に専属のスタイリストや手先が器用な彼氏がいるのではと問い詰める。そんな3人の様子に、いつも笑顔の総務課女子の眉間にも徐々に皺が寄り始める。
益田と岸根はコツは「根気」だと強めにキッパリ言い切り、あっけにとられている3人に対し「ちょっとやって『難しい できない』って投げてるんじゃないですか?」と問いかけ、自分達もはじめはそうだったと語り始める。益田と岸根にも編み込みができなかった時期があり、それでもマスターするまで練習を繰り返した過去があったのだ。それだけでなく、彼女達は自分に合うバランスやスタイリング剤に至るまで研究を重ね、自分達が納得いくまで1時間でも2時間でも鏡の前に座るのだと明らかにした。そこまでの領域に達する前に諦めてしまった3人に対し、2人は「それくらいやってますか?っていう話ですよ」と笑顔で圧をかけるのだった。その迫力に圧倒された3人は、素直に自分達の努力不足を認めることしかできなかった。
おしゃれや可愛さは生まれつきのものではなく、日々の努力で作られていることがよくわかる名セリフである。

井上「久しぶりにこんな純粋な黒髪みました!とってもステキです!大事にしてくださいね!」

一度も染めたことのない城之内の黒髪を綺麗だと褒める井上。

城之内と井上が初めて出会った時に、城之内の髪を褒めた井上の言葉。3巻実験20『いい匂いだと言ってくれ』で従姉妹ユキの結婚式に出席した城之内は、二次会会場に到着する。その矢先、会場の入口付近で井上とぶつかってしまう。お互いに謝った後、井上から髪を染めていないのかと聞かれた城之内は、唐突な質問に驚く。そんな城之内に、井上は自分が美容師であることを明かす。自分と程遠いおしゃれな職業の井上を前に、城之内はこれまで一度もカラーをしていない髪を馬鹿にされるのではと、思わず逃げようとする。ところが、井上からは「すごくきれいな黒髪」だと褒められる。意外な反応に立ち止まった城之内に向かって、井上は「久しぶりにこんな純粋な黒髪見ました!とってもステキです!大事にしてくださいね」と笑顔で伝えた。
これまで男性に褒められるという経験がほとんどなかった城之内は、この言葉で井上に惹かれ、客として彼の美容院に通うようになった。
この後、城之内は井上に言われた「すごくキレイな黒髪ですね」いう言葉を紙に書き写し、お守り袋の中にしまい続けている。井上の褒め言葉は、彼女が今後も美の研究を続ける大切なモチベーションとなった。

持田「人に綺麗にしてもらうこと それがいちばんの非日常で癒やしなのよ」

美白肌の持田(右)の趣味は着物。浴衣のトラブルに苦悩していた3人の救世主となる。

5巻実験37『君の浴衣は10000ボルト(後編)』で、浴衣のトラブルに見舞われた3人を救った持田の言葉。実験36『君の浴衣は10000ボルト(前編)』で、神社のお祭りに行くために2時間かけて自力で着付けをした3人。だが、訪れた神社では他の浴衣女子達の可愛さに圧倒される。人混みでそばを通りかかった男性2人組にぶつかられた3人は、イカ焼きのタレで浴衣を汚してしまう。更にはぶつかってきた男性達が自分達に謝りもせず、傍にいる可愛い女子をナンパしている様子を目の当たりにする。自分達が2時間もかけて着付けをしたにも関わらず、着崩れや下駄による足の痛みなど散々な目に遭った3人は自棄を起こしてしまう。
そんな中、3人の前に着物姿で現れた持田は3人を神社の外へ連れ出した。持田は、自分の友人が勤めるホテルで開催されている浴衣のガーデンパーティーに、3人を連れてきてくれたのだった。自分達に浴衣を着せるプランナー達に少し戸惑っている3人に、持田は「あなたたちは立ってるだけでいいの」と伝える。続けて、自分達だけで頑張ることばかりを考えずに人に与えてもらったり甘えてもいいのだと話した。
苦労して着付けをした3人だったが、プランナー達が赤くなった足を見て下駄まで用意してくれ、更に髪型やメイクも直してくれたことに感動する。すっかり綺麗な浴衣姿に着替えた3人は、先ほどまでとは違って苦しくない状況に癒しを感じた。そんな様子を見た持田は「人に綺麗にしてもらうこと それがいちばんの非日常で癒やしなのよ」と3人に新しい気づきを与えた。
人に綺麗にしてもらう喜びと浴衣の良さを体感した3人は、持田を含めた女4人でホテルのガーデンパーティーを楽しみ、充実した夜を過ごすのだった。

思わず笑ってしまう失敗の数々

出典: s.yimg.jp

スウェットの研究の末、とても外に出られないコーディネートを身につけた前田(右)にツッコミを入れる城之内(左)と佐藤(中央)

流行に疎い3人の研究には失敗が付き物。メイクが濃すぎてしまう、着方を間違えてしまうというような初心者がやりがちな失敗の他にも、コメディ漫画ゆえに読者がつい笑ってしまう失敗も多発する。
2巻実験13『うさぎに代わって、お仕置きよ!』では、仕事が早い故にどんどん仕事を任され周囲に放置されている気がする城之内がうさぎ顔メイクを研究する。ピンク色のコスメを多用し、うさぎのような愛らしさで放っておけない印象を与えるメイクに挑戦した城之内だったが、同僚の男性社員には濃く塗ったピンク色の瞼を結膜炎に間違われてしまう。
若い頃のトレンドを未だに引きずる前田は、1巻実験9『スウェット方程式』でおしゃれなスウェットの着こなしを研究するも、小学生のようなスタイリングになってしまう。これで外に出られるかと城之内達に問うが、一歩も出てはいけないと突っ込まれてしまう。
楽な研究で成果を得て彼氏を作りたい佐藤は、2巻実験11『私、さしましぇん!』で傘を研究した際、傘を忘れて男性と相合傘をする女性を目撃する。その様子を真似て、雨の中傘をささないで待っていれば誰かが傘をさし出してくれることを期待し、街中へ飛び出した。しかし、長い時間待っても誰も傘を貸してはくれず、ついに自分に傘を貸してくれたのは若い男性ではなくおじいちゃん。しかも、そのおじいちゃんが貸してくれた傘はボロボロだった。
作中では、彼女達の失敗が通過点で最後にはうまくいくパターンもあれば、失敗がストーリーのオチとなるパターンもある。毎回必ずうまくいくとは限らない失敗の数々は、本作のコメディ部分を味わえる名シーンとなっている。

研究の成果に喜ぶ3人

試行錯誤の末、つけまつげの攻略に成功した3人は、自分達の変化に驚き喜ぶ。

毎話ごとに研究を行う3人だが、流行がわからないために成功までの道のりは長く厳しいもの。まず手元にある研究対象を身につけるなどしてみるが、初心者ゆえに失敗が続く。時にはネットの情報で得たコスメや便利グッズを求め、わざわざ研究室を出て買いに走ることもしばしば。時間と労力をかけ、失敗を繰り返して手探りながらも少しずつコツを掴んでいく3人は、毎話の終盤にはなんとか自分達なりの成功をおさめることができる。地味な城之内には華やかさが増し、ぽっちゃり体形の佐藤は体形を活かしたバランスを手に入れる。時代錯誤になりがちな前田もほどよく大人のトレンドを取り入れ、3人ともステキ女子に変身する。
成功を収めた後は、そのまま綺麗になった自分達を楽しんでストーリーが終わる時もあれば、褒められても照れてしまい、自虐に走ってしまう場合もある。時にはせっかく成功した研究にも関わらず、次の日には元の3人に戻ってしまうことも。研究成果を維持することにまだまだ慣れていない3人の研究に終わりはないが、試行錯誤を繰り返した3人の変身ぶりは、読者も一緒に喜べる名シーンである。

『人は見た目が100パーセント』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ドラマ化により原作の追加連載が決定

本作の単行本は全5巻だが、もともとは4巻で終了した作品だった。連載終了後にドラマ化が決まったことで追加連載をすることになり、5巻が発刊された。本作を描くきっかけとして、漫画家友達の六花チヨから「美容漫画を読みたい」と言われたことを理由に挙げている。作者自身も家事育児と仕事に追われる生活を送っており、美容やファッションの流行がわからない時期があったことを1巻で明かしている。
多忙なため、美容にかけられるエネルギーが多くないことに気付いた作者本人の「漫画を読みながら美容の知識が入れられたら一石二鳥」という考えがからこの作品が出来上がった。

3xAmadeus
3xAmadeus
@3xAmadeus

目次 - Contents