エガオノダイカ(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『エガオノダイカ』とはタツノコプロの創設55周年記念作品として制作されたオリジナルアニメ。
ソレイユ王国の王女ユウキ・ソレイユとグランディーガ帝国の軍人ステラ・シャイニングという対局的な人生を送って来た二人の主人公が出会うまでを描いている。
戦闘ロボットによる戦争ものという人気の高いテーマで期待も高かったが、主人公であるユウキとステラの活躍は数えるほどしかなく、戦争も消化不良のまま終わり、名作になる要素を持ちながら不発に終わった「惜しい」作品として話題になった。

『エガオノダイカ』の概要

『エガオノダイカ』とは、タツノコプロの創設55周年記念作品として制作されたオリジナルアニメ。
2019年1月から3月まで放送された。

2018年10月にアニメの放送が発表されると、原作となる作品がない(世間的な知名度がないためPR面で不利になりがちである)オリジナルアニメでありながらTwitterで『エガオノダイカ』というワードがトレンド入りを果たしている。

天真爛漫な性格と笑顔で国民の皆から愛されるソレイユ王国の王女ユウキ・ソレイユと、貧しい路上生活に耐えられず、生きるため衣食住の保証された軍に入隊したグランディーガ帝国の軍人ステラ・シャイニングという対局的な人生を送って来た二人の主人公が出会うまでを描いた作品である。

戦闘ロボットを駆使した戦争ものという人気の高いテーマに加え、主人公の一人であるユウキが1話から優秀な戦術家として才能の片鱗を随所に見せるなど、今後起こるであろう戦争と、敵から国を守るため自ら軍を指揮して活躍するユウキの姿を想像した視聴者を大いに期待させた。
だが、蓋を開ければ王国は侵攻する帝国から逃げるだけで、視聴者が最も期待していたユウキが指揮官として活躍する描写も数えるほどしかなかった。しかもユウキと親しい関係だった主要人物が相次いで非業の死を遂げたため、視聴者は違う意味で驚きと衝撃を受ける事になる。
最終話直前に行われた監督のインタビューでは『エガオノダイカ』を通して「戦争のリアル」を描きたかった事が語られているが、視聴者を驚かせようと予想外の展開を狙いすぎたストーリーは、逆に作品の盛り上がりを奪う皮肉な結果となってしまった。

もう一人の主人公であるステラ擁する帝国側のストーリーは、基本的に帝国の侵攻から逃げるユウキを追う帝国軍の一分隊の戦闘と日常を描いているが、長年苦楽を共にして来た「チーム」だけあって統制が取れた場面が目立つ。
敵に付け入る隙を与えるような無駄な行動や間違った判断を犯さないため見ていて安心感があり、帝国側にスポットを当てた回の時は視聴者からも好意的な感想が目立った。

基本的に帝国側は名前のないモブとの戦闘が大半だったため誰かが目立って活躍する事はなく、ステラも雑魚を倒すだけで戦闘で主人公らしい「戦果」を挙げたとは言い難い。
だが、全てが裏目に出て自分で犠牲を大きくしたユウキに比べれば「マシ」という意見が多く、ステラが戦果を挙げられなかった事に対する不満の声はほとんどない。

一方の王国側はユウキの「これ以上犠牲を出したくない」という理想論に固執するが故に自身の軍事的才能を活かそうとしないばかりか、戦闘でも犠牲を出さないよう消極的な手ばかり打って逆に自分達の犠牲を大きくしてしまうのが基本パターンだった。
犠牲を出さないための消極策が悉く裏目に出るユウキの甘さと、それに反発する家臣との対立で王国側のストーリーは登場人物同士の雰囲気が悪く、ユウキに感情移入出来ないという声が目立った。
余談だが、ユウキの性格が支持されない分、彼女が2話で披露した「顔芸」が話題となり「ユウキ様の顔芸で遊ぼう」と各所でネタにされるなど、制作側の意図とは違う意味で人気が出たのは皮肉である。

「二人が出会うまで」を描くのだから、よくよく考えたら展開的にユウキとステラが最終話まで出会う事はないのだが、最終盤に入る10話が終わるまでユウキとステラが出会う気配は一切なく、11話の最後でやっと二人が接近して、12話の中盤でようやく出会うという、主人公二人が出会うまでが非常に遅い(但し、制作側の構成通りではある)のが視聴者の不満を集める事になる。
結果、ユウキが戦争を終わらせるため12話掛けて奔走する話にした方が帝国に使う尺を削った分もっと丁寧に作品を作れたのではないか、主人公を二人も置く意味はあったのか、という感想が殺到する事になってしまった。
戦争の結末も、ユウキとステラが世界中の兵器を止めて戦争が継続不可能になったから停戦せざるを得なくなったというもので、視聴者が期待した指揮官として覚醒したユウキの活躍によるものではない。
また、停戦してから翌年の夏を迎えるまでの過程が(作中の描写からその間の展開を想像で補う事は十分可能ではあるが)一切描かれておらず、駆け足どころではない「説明不足すぎる」結末に納得する声はやはり多くなかった。

「タツノコプロ創設55周年記念作品」という大きな看板と期待を背負って放送された『エガオノダイカ』を総括すると、戦争にロボットという人気の高いテーマに加え、主人公が覚醒する伏線など期待出来る要素が多く、名作になるだけの下地は出来ていたが、それを活かす事が出来ず「不発」に終わった事を残念に思っているのは視聴者の大多数に共通した感想である。

賛否両論というよりも賛3:否7という厳しい評価が目立つが、厳しい評価と感想の数々はそれだけ周囲が期待していた証拠であり、上手く作れば名作になっていただけに「惜しい」作品だった。

『エガオノダイカ』のあらすじ・ストーリー

誕生式典

地球を遠く離れた人類は、新たな惑星で文明を築いていた。その惑星の一国であるソレイユ王国では、本作の主人公である王女ユウキ・ソレイユの12歳の誕生日式典が行われていた。
式典でユウキは、ソレイユ王国を更なる繁栄に導くと宣言するのであった。

グランティーガ帝国への使節団として国境に向かう近衛騎士団を見送るためユウキは港へ来ていた。
そこにはユウキの幼馴染でユウキを守る騎士、ヨシュア・イングラムの姿もあった。ヨシュア達は王国の旗艦空母であるエクセスアルカに乗り込み国境へと向かうのであった。

国境戦線

しかし、国境では激しい戦いが繰り広げられていた。実はソレイユ王国とグランティーガ帝国は既に戦争状態にあり、そのことをユウキは知らされていなかったのだ。

戦力に劣るソレイユ王国はテウルギアというロボットに新型のクラルスを搭載し、現状の打開を狙うのであった。クラルスとは、この星特有の鉱物であるクラルスラピスを加工して機材に組み込む事でエネルギーを生み出すもののことである。
新型クラルスとは、これまで使われていたクラルスを大幅に上回るエネルギーを生み出す高スペックエンジンのようなものである。王国が戦況を打開するには新型クラルスの力を借りるしかなかったのである。
作戦により新型クラルスに乗り込んだヨシュアは囮となっていた。機体は大破し、ヨシュア自身深手を追っていたが、騎士の一人ユニ・ヴァンキッシュに支えられなんとか撤退するのであった。

ヨシュアの死

久々にヨシュアに会えると思っていたユウキは、教育係のレイラ・エトワールと政務官のイザナ・ラングフォードと共に港へと向かうのであった。
そしてついに王国と帝国が戦争状態にあるという現実を知るユウキ。
そしてユウキがヨシュアの元へたどり着いたとき、騎士団総長のハロルド・ミラーからヨシュアがたった今亡くなったという事実を聞かされるのであった。

食料プラント

一方、帝国軍ビュルガー分隊には、新しく隊長に任命されたゲイル・オーウェンズが着任していた。帝国も激しい戦いにより多くの戦死者が出ており、生き残ったビュルガー分隊は5人のみであった。
そこにもう一人の主人公であるステラ・シャイニングの姿があった。

ソレイユ王国との戦いで勝利を重ねる帝国であったが、帝国は資源が乏しく食糧難という問題を抱えていた。そこでゲイルは上層部から命名を受け、物資が残っている可能性のあるアザリアという街の偵察を命じられることになったのである。

潜入したゲイルとステラは戦争孤児となった子供達に出会い、王国軍の食料プラントの情報を手に入れる。
ゲイル達の任務は新型クラルスの奪取と食料プラントの破壊である。しかしプラントの爆破には子供達に危険が及んでしまう。ゲイルはビュルガー分隊を離れ単独で子供達を連れ出そうとしたのである。

しかし、子供たちはゲイルが自分達の両親を殺した帝国の軍人と知り避難を拒否した。子供達の避難に難航するゲイルの元にステラが合流した。ステラは子供達に銃口を向け、強引に避難させるのであった。

ショックを受けるユウキ

ヨシュアを失ったショックによってユウキは部屋に閉じこもっていた。そして王国の戦況は悪化の一途を辿っていた。
ユウキから全権を任されていたイザナとハロルドは、不利な戦況を打開する為新型クラルスを使用する意思を固めるのであった。

そんな中、ユウキはレイラから戦況の報告を受けていた。そしてユウキはこれ以上の被害を出さない為、いくつかの街を放棄するよう求められる。
そのリストにはリージュという街が含まれていた。リージュはユウキの両親が亡くなった街であり、ユウキにとって特別な感情のある街であった。しかし国民を守る為、領地の放棄を承認するのであった。

レイラの過去

レイラは元々帝国の人間であり、12年前リージュで起きたテロ事件の際現場にいたのである。テロによって怪我を追ったレイラは王国軍に保護された。
更に移動中の車を爆発が襲ったのである。そしてレイラは、まだ赤ん坊だったユウキを爆発から庇い一ヶ月もの間昏睡状態に陥ってしまったのである。
レイラが意識を取り戻した時、イザナからテロによって家族が死亡したことを知らされる。

ユウキの指揮

領地の最後を見届ける為、指令室に向かうユウキ。国民の避難はほぼ完了し、後は撤退するのみとなっていた。
しかし避難を受け入れず帝国と戦うという民の集団を見つける。そしてハロルドは、ユウキの頼みで撤退していた部隊を救出に向かわせる命令を出すのであった。

だが救出に向かった部隊は帝国の攻撃を受け全滅してしまうのであった。ユウキは自分の行動の結果が最悪の結末を迎えるという、戦争の厳しい現実を知る。

帝国の作戦

新型クラルスに苦戦していた帝国は現状を打開する為、別動隊を作って敵拠点を叩く作戦を立てた。それは別動隊が夜間に迂回路から敵の背後を突き、主軍の突破を援護するというものであった。
帝国も被害は出すものの、何とか作戦は成功するのであった。

王都陥落

王国の最終防衛ラインは突破され、帝国軍は王都バリアントから15キロの距離まで迫っていた。
帝国の司令官アイネ・フリートから王都軍指令室に通信が入る。アイネは王都軍に降伏勧告をするが王都軍はそれを拒否した。そして王都バリアントの戦いが始まった。

王国軍の作戦は、テウルギアで固めた陣地の前方と後方に地雷を仕掛け敵を撃破するものであった。
激しい戦いの末、ユウキの機転で帝国軍を一時撤退させることに成功する。しかしユウキは降伏する為に帝国に向かう意思を固めるのであった。

エクセスアルカで帝国に向かうユウキ達。しかし実際はユウキの意思に反して王都から逃げ出す形になる。しかしイザナは自身の家族と仲間をユウキに託し王都に残るのであった。

悲しみのビュルガー分隊

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